このお土産は持ち込めない!?厳しくなった “検疫” に要注意!!

海外旅行の楽しみの一つが「お土産」。
行った先々での思い出や巡り会ったグルメの逸品を、持ち帰りたいと思うのは当然のことです。
プレゼントすることも多いでしょう。
しかし、海外で入手したものの中には、日本への持ち込みが禁止されているものがたくさんあります。せっかく買ったものを没収されることがないように、しっかりリサーチしていきたいですね。
ここでは、帰国時に行われる持ち込み品への検疫について、具体的にわかりやすく解説していきます。
目次
検疫とは?
「新型コロナウイルス」で大きな注目を集めた“検疫”という入国時の関門。
検疫とは、一体何なのでしょうか?
検疫とは、
国内に通常存在しない伝染性の病原体が侵入するのを防ぐことを目的として、国内外へ出入りする人や物を検査すること
を意味します。
海外との接点となる空港や港に設けられた検疫所で実施され、必要に応じて隔離や消毒、あるいは没収などの措置が取られます。
こういった検疫は、人だけでなくお土産などの物品も対象となるところがポイントです。
しかし、重篤な病気を引き起こす可能性がある病原体を持っているかチェックするのはわかる気がしますが、なぜお土産品にまで検疫が必要なのでしょうか?
病には人間だけではなく、動物や植物もかかります。
もちろん、かかる病気の種類は異なりますが、これらの原因となる細菌やウイルスは、それら動植物に感染、あるいは付着した状態でいることが多いです。
また、植物を食い荒らす害虫も、農家にとっては非常に厄介な存在です。
このため、害虫やその卵、あるいは植物に感染する病原体などが付着している可能性が高い「果物や野菜」「土」も検疫の対象となるのです。

このように、国外から持ち込まれる“新しい脅威”に対しては、自然の防護柵ともいうべき「免疫」や「天敵」が存在しないことが多く、技術的にも打つべき手が整っていないこともあり、対策が後手に周りやすいのが現状です。
そのため、あっという間に感染拡大し、農畜産業や日本独自の生態系に大きな被害をもたらすことが予想されます。
ですから、日本の植物・動物を守る(植物防疫・動物防疫といいます)ためには、それらが付着している可能性があるものをむやみに持ち込まないことが大切です。
そこで、リスクの高い物品に関しては、たとえお土産であっても検疫が必要なのです。
検疫の対象品目は国によって定められており、本記事では「お土産として日本に持ち込むもの」を中心に解説していきます。
反対に、日本の物を海外へのお土産などとして持ち出す場合には、その国の検疫対象となっていないか確認しておく必要があります。
この国には持ち込めたけど、こちらの国はNG…という事例も少なくありません。
特に食品類を持ち出すときは十分な注意が必要です。
海外への持ち出し品に関する情報は、こちらの記事でも解説しています。
どうすれば持ち込めるか
基本的に次項以下にあげた物品は、輸出する国の政府が発行する「検査証明書」が添付されていないと持ち込むことができません。
しかし、この検査証明書は主に輸出入業者が取得するもので、一般の観光客がお土産用に取得するのは困難です。
そのため、実質的にお土産として持ち込むことは不可能と考えておきましょう。
仮に、免税店などの店員に「税関で申告すれば大丈夫」と言われたとしても、検査証明書がないものは持ち込めないので、惑わされないようにしましょう。

ただし、アメリカ(ハワイなど含む)・カナダ・オーストラリア・ニュージーランドでは、肉製品などのパッケージに各国の政府機関が発行した日本向けの検査証明書を明記して販売しているものがあります。
お土産として持ち帰りたい場合は、このような商品を選ぶと良いでしょう。
詳細は動物検疫所のこちらのPDFをご確認ください。
検疫の流れと罰則
日本に到着したら、入国審査のあと税関検査の前に検疫カウンターに持ち込む物品を申告する必要があります。
このとき、検査証明書の提出が必要です。
証明書の添付がない場合は持ち込めませんので、その場で放棄することになります。
特に肉製品などの畜産物に関しては検疫が強化されており、家畜伝染病予防法などによる罰則(3年以下の懲役または100万円以下の罰金)もあります。
日本では検疫用に訓練された探知犬が旅行客の荷物の間を巡り、畜産物の有無を検査しています。
手荷物だけでなくスーツケースなどの預け入れ荷物も検査対象です。
検査に引っかかると、荷物の中身をすべて広げる羽目になる可能性も。
また、税関を通過するのに非常に時間がかかってしまいます。
旅行を楽しい気分で終わらせるためにも、うっかり持ち込むことのないように十分気を付けましょう。
それでは、検疫対象品目の具体的な例を紹介していきましょう。
肉類および肉加工品
牛、豚、山羊、羊、鹿、馬、鶏、うずら、きじ、だちょう、ほろほろ鳥、七面鳥、あひる、がちょう、ミツバチなどに由来する次のものが対象
- 生肉・臓器(骨、皮、脂肪、血液など含む)およびその加工品
- 卵(卵殻含む)
- 生乳、乳製品(例外あり:下記参照)
- フン・尿
2019年4月より検疫がより厳しくなったのが、肉類とその加工品。
各国で口蹄疫や鳥インフルエンザ、BSEといった家畜伝染病が流行するのを背景に、日本への持ち込みが厳しく検査されるようになりました。
肉などの非加熱のものは検疫の対象と認識しやすいですが、注意しなければならないのが「加工品」も持ち込み禁止となっている点です。
例えば、ハムやソーセージ、ジャーキー、肉まん、肉のかけらが入った調味料など、肉を加工したものやそれを含むものも持ち込めません。

これは加熱殺菌されているか、真空パックなどの密閉性があるか…といった状態に関わらず、持ち込み不可です。
また、機内での食べ残しも、免税店で買ったものも同様に持ち込めませんから、日本へ到着する前に食べきってしまいましょう。

ただし、乳製品には例外があり、次の範囲なら持ち込み可能です。
乳製品の持ち込み可能範囲
- 牛乳、チーズ、バター、クリームなど:個人で食用するもので10㎏以下まで持ち込み可
- プロセスチーズ、ヨーグルト、乳酸菌飲料や、常温保存品、缶詰・瓶詰・レトルト加工品(加熱滅菌されたものに限る):持ち込み可(個人で食用する範囲)
詳しくは
『動物検疫所ホームページ』の「乳製品の検疫開始について」
にて掲載されていますが、少々わかりにくく…(;^_^A)
簡単にいうと、一般的に食用として流通している乳製品に限っていえば、10㎏以下なら持ち込みできると考えて問題ないということです(2020年2月現在)。
ただし、開封せずに積み込みましょう。
また、乳製品は冷蔵品が多く、液漏れや匂い漏れなどを起こしやすいので、梱包には十分な注意をし、迷惑を掛けないようにしましょう。
なお、製造過程で高度な処理がされている市販の即席麺(インスタントラーメン)は検疫の対象とならないのでお土産にできますよ。
果物・野菜・キノコ(生)

これらの物品は非常に細かく規定されています。
持ち込み可能か調べたいときは、植物検疫所の規制品簡易検索を用いて調べておきましょう。
下記に多くの国に共通する事例を挙げておきますので、参考にしてください。
持ち込めるものの例
- 検査なしでOK
まつたけ、マッシュルーム、ボルチーニ、トリュフ
- 申告は必要だが検査証明書は不要
アーモンド、カシューナッツ、ココやし、こしょう、ピスタチオ、くるみ、マカダミアナッツの乾燥した種子(栽培用は除く)
検査証明書があれば持ち込めるものの例
- 果実類:ドリアン、パイナップル、、キウイフルーツ、ココヤシ、栗
- 野菜類:人参、にんにく、しょうが、アーティチョーク、アスパラガス、チコリ、シャロット、パクチー(コリアンダー)、バジル、レモングラス
持ち込めないものの例
- 果物類:柑橘類(オレンジなど)、マンゴー、ライチ、ランブータン、パッションフルーツ、バナナ、パパイヤ、グアバ、ドラゴンフルーツ(ピタヤ)、マンゴスチン、スターアップル、アボカド、桃、柿、梨、メロン、りんご
- 野菜類:トマト、パプリカ(ピーマン)、きゅうり、唐辛子、かぼちゃ、じゃがいも
など
※ 購入(輸入)した国によって異なります。
必ず輸入先のリスト植物検疫所の規制品簡易検索を確認してください。
ここに挙げた例を見ても、意外なものまで検疫対象となっていることがわかります。
実は肉類に次いで多いのが、果物や野菜を検疫対象と知らずに持ち込んでしまう例なんです。
珍しい熱帯のフルーツや、国内では高価な野菜など、日本に持ち帰って食べたくなりますよね。
でも、これらも絶対に持ち込み禁止!
肉類ほど危険なイメージがないためか軽視されがちですが、前述のように想像以上に危険な一面をもっているからなんです。
検疫の対象品目とレベルは輸入する国によって異なるため、一概には言えませんが、上記の例を参考にし、各国の品目を確認しておくことをおすすめします。
果物・野菜以外の植物(苗・種子・切り花・木材)

検査証明書があれば持ち込めるものの例
- 苗・球根・種子
- 切り花(ラン、ドラセナ、ほか。生果実が付いているものを除く)
持ち込みできないものの例
- 土および土がついた植物
- イネワラおよびイネモミ(朝鮮半島および台湾を除く)
このように、持ち込みが可能な植物でも土が付いているものは不可となるので注意しましょう。
土以外の植え込み材料として、ピートモス、ミズゴケ、パーライト、バーミキュライト等が検査をパスすれば持ち込みOKとされています。
ただし、土と間違われないよう、新しいものに替えておくようにしましょう。
植物の加工品など

写真ACより
植物の加工品には、乾燥させた農作物のほか、わらで作った民芸品や帽子などの雑貨もあります。
これらにも検疫の対象となっているものがあるので、注意が必要です。
一般的に、高度に加工されたものや、ジャムのような瓶詰などは検疫の対象外となっています。
持ち込めるもの(検査なしでOK)の例
- 緑茶、紅茶、中国茶、乾燥ウコン、乾燥トチュウ
- 香辛料(小売り用に密封されたもの)、発酵処理されたバニラビーンズ
- 亜硫酸、アルコール、酢酸、砂糖、塩等につけられた植物
- 一般的なドライフルーツ、干し柿(完全なもの。半生は不可)
- 木工品、竹工品、籐、コルク
- 紙、麻袋、綿、ひも、へちま製品などの繊維製品
※ 詳細は植物防疫所「輸入植物検疫の対象とならない植物について」へ
検査証明書が必要なものの例
乾燥香辛料(小売り用に密封されたもの以外)、乾燥豆類、コーヒー豆(生)、米(精米)、薬用ニンジン、ドライフラワー、麦わら(帽子など)など
絶対に持ち込めないものの例
稲わら製品(三角枕など)、殻付きクルミ
※ 国によって異なります。
必ず輸入先のリスト植物検疫所の規制品簡易検索を確認してください。
特に東南アジアでよく見かける「わら製品」には注意が必要です。
中でもタイの人気のお土産品「三角枕」は、詰め物として稲のわらが使われていることがあり、その場合は持ち込めなくなってしまいます。
購入時はウレタン製のものを選ぶようにしましょう。
これはどう?「コーヒー豆」「魚介類」「砂漠の砂」
持ち込みの可否は、病原体や害虫などの付着率や現地での発生状況など、リスクに応じて定められています。
このため、お茶やドライフルーツ、木工品など、お土産レベルであれば証明書も検査も不要というものも少なくありません。
例えば、前述の「コーヒー豆(生)」は検査証明書が必要ですが、「焙煎したコーヒー豆」で小売り用に密封されたものは持ち込み可能です。
さらに、魚や貝などの「魚介類」は、生きていないもので食用ならば加工品も含め持ち込みOK。
もちろん個人やお土産として消費できる量までです。
かつては中国のお土産としてよく見かけた「上海ガニ」ですが、生きているものは持ち込み禁止。
実は特定外来生物にしていされているんですね。
ゆでたものなら持ち込みOKですが、美味しさは…^_^;。
これら水産動物の検疫についての詳細は、
動物検疫所(水産防疫)
をご覧ください。
そして、意外に問題なく持ち込めるものが「砂漠の砂」。
お土産用として小瓶に入ったものが売られていますので、記念に欲しくなりますよね。
サラサラで土の混入がない砂漠の砂は、有機物を含んでいないので検査にパスできます。
…とはいえ、検疫カウンターで現物を見せ、土などの混入がないことを確認してもらってから持ち込みましょう。
同じ砂でもビーチの砂は有機物を含んでいる可能性がある上に、砂の持ち出しを禁止している国が多いので、やめておきましょう。

道端の石と言えども同様です。
国によっては多額の罰金や拘束される可能性もあるので、持ち出さないようにしましょう。
おわりに
ここで紹介した物品は日本への持ち込みが制限されているものの例です。
しかし、諸外国へ持ち込む(日本からの持ち出し)ときにも、その国の検疫基準による制限があります。
日本へ持ち込めないものは、ほかの国にも持ち込めないと考えておいたほうが良いでしょう。
なお、オーストラリアやニュージーランドなど貴重な生態系を維持している国は、入国時の検疫が日本以上に厳しいです。
次の記事で紹介していますので、旅行前にぜひチェックしてくださいね。

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