夏休みの自由研究を最速で終わらせたい人におすすめするのが、宝石のように美しい鉱物探し。
実は、非常に身近で簡単に入手できるものに含まれているんです。
しかも、取り出し方も超簡単!
数時間で終わる簡単実験です。
今回は、理科の教科書を知り尽くした Uni が、学校の授業をベースに「あっという間に終わるのに満足度の高い自由研究」を写真と共に伝授します!
もちろん、使う実験器具もその辺のもの中心という安上がりな方法で(笑)!
誰でも失敗しない、すぐに終わる実験(!)なので、低学年にも時間のない人にもおすすめです。
学校での扱い
画像の中央に見える透明な石粒がセキエイ(石英)。
不純物が少なく透明度が高ければ、❝水晶❞と呼ばれます。
角ばった黒い粒は黒雲母。
大きければ宝飾品としての価値も出る美しい石の粒が、実は身近なものに含まれています。
これを探すのが今回の実験テーマの1つ。
小学校1年生から中学生まで、どの学年でも取り組めます。
危険な物や操作もないので、1人で実験しても大丈夫だと思いますよ。
こんなに簡単な実験ですが、教科書での扱いは小学校6年生と中学生。
火山の成り立ちや地層の単元が該当します。
でも、マグマを噴き出す火山のイメージが持てれば、低学年の子供でも自由研究に使えるネタだと思います♪
実験方法から考察のヒント、応用実験・発展学習までお伝えしていくので、ぜひ取り組んでみてください!
まずは予備知識:鉱物とは?
鉱物とは簡単にいうと、自然界で産出される無機物(ミネラル)で、特定の化学組成をもった結晶体です。
それぞれの鉱物には硬さ、光沢がある、縦に割れやすい、磁石にくっつく…などの特徴があり、これらの性質や組成によって分類されています。
私たちが目にする石ころ(岩石)は数種類の鉱物が集まったもので、構成する鉱物の種類によって「花崗岩」「玄武岩」などに分類されます(火成岩)。
初めに「自然界で産出」と書きましたが、いわゆる火山活動がイメージしやすいでしょう。
地球の内部でドロドロに溶けた物質が、火山活動などによって地表に噴出したときの条件によって結晶のでき方が変わり、鉱物の違いになります。
例えば、宝石として有名な❝ダイヤモンド❞と鉛筆の芯の主成分❝黒鉛❞は、どちらも炭素原子の結晶。
どちらになるかは噴出時の速度と冷え方によって決まるのです。
さて、こうやって地球の内部から地表にやってきた鉱物は、大きく美しいものは宝石として珍重されますが、小さなものは身近な地面に散らばっています。
しかし、前述の石ころのように、数種類の鉱物が混ざり合ったまま固まった状態だと、鉱物を単独で観察することができません。
そこで、石ころになっていない状態から鉱物を取り出そうというわけ。
それに最適なのが「火山灰」なんです。
火山灰とは空中に噴出されたマグマのうち、直径2ミリ以下のものをいいます。
現在でも桜島など活火山のある地域では降り積もった火山灰の被害がニュースになることもしばしば。
さらに、何万年も前の噴火で生じた火山灰が、地層となって露出している地域もあります。
…といっても、やみくもに探すのはちょっとした一苦労。
これは応用テーマとして取って置き、まずは確実に鉱物が見つけられる土を使って、基本の実験から取り組むのがおすすめです。
簡単に見つけられるし、基本の実験だけでも自由研究として成立させられるので、ぜひ挑戦してくださいね♪
基本の実験:鹿沼土から火山灰(鉱物)を取り出そう
失敗したくない人は、絶対に鉱物が見つけれられる土「鹿沼土」を使いましょう。
こちらの記事【応用編】では別の土も活用しますが、短時間で終わらせたいなら「鹿沼土」がベスト!
鹿沼土はどこのホームセンター・100均でも入手でき、100%の確率で火山灰を見つけられます。
さらに、やわらかい粘土質の土に覆われているので、水に浸せば粘土が剝がれやすく、経験上、ほかの土より簡単に火山灰を分離できるのもポイント。
なお、別記事の応用実験に取り組む人も、ここで紹介する「椀がけ法」が火山灰取り出しの基本になるのでマスターしておきましょう。
せっかくなので「鹿沼土」の実験もやっておいた方が、応用編の考察も書きやすくなるのでおすすめです。
材料・用意するもの
実験に使う材料や器具について、ちょっと捕捉しますね。
まず、観察対象として最適なのが園芸用土として売られている「鹿沼土」です。
他にもあるので応用編にて紹介しますが、入手もサンプリングも容易なので、最初は鹿沼土をおすすめします。
土というものの、鹿沼土は約3万年前の赤城山の噴火により噴出した軽石で、栃木県鹿沼市を中心に広く降り積もりました。
火山性の石なので、内部には微小な鉱物(火山灰)を多数含有しており、今回はこれを取り出します。
次に、鹿沼土を入れる器ですが、これは傷がついても良ければ何でもOK。
Uniは市販のプリンの空き容器を使いましたが、お茶碗でもお皿でも良いです。
ただし、水を入れて押し潰すので、丈夫で多少深さがあり、底面がお椀のように丸みを帯びているものが向いています(プリンカップのように平らでも可)。
採取した鉱物は非常に小さいので、プレパラートを作成し顕微鏡などで拡大し観察します。
本格的なプレパラートはガラス製のスライドガラスを用いますが、今回は簡易的に透明なプラスチック製の板でOK。
100均で売っているプラバン用シートでもいいし、スーパー・コンビニのお弁当やお惣菜のフタでも大丈夫。
横7.5㎝×縦2.5㎝くらいに何枚かカットして用意しておきましょう。
あと必要なものは、顕微鏡などの拡大できるツール。
低倍率の顕微鏡(教材の付録など)があれば文句なしですが、今回の観察対象の鉱物は比較的大きいので、百均で売っているマクロレンズ(10倍だと◎)でも十分です。
マクロレンズがなくても、大きい鉱物ならスマホのカメラのズーム機能だけでも何とかなるので、後述する考察の項をご覧くださいね。
しっかり見たい方は高倍率のスマホ用レンズを用意しましょう。
400倍くらいまで見えるといろんな自由研究で使えるので、一つ持っていても良いかも…です。
ただし、スマホの機種やケースによって取り付けられないレンズもあるので、注意してくださいね。
実験方法
今回紹介するのは「椀がけ法」という方法です。
①
少量の鹿沼土をカップに入れ、水をヒタヒタに入れます。
このとき使った土の重さを量っておけば、データも増えます。
②
スプーンや指の腹を使って鹿沼土の粒を粉々にしていきます。
初めは少ない水の量で潰した方がやりやすいです。
※ 相手は石なので、少し力をいれてスプーンで潰すぐらいがちょうど良いです。
③
水を多めに入れてから、良くかき混ぜて3秒数え、濁った上澄みを捨てます。
このとき、画像のように黒い沈殿物を流さないように注意しましょう。
④
手順②~③を繰り返します。
画像のように黒っぽい沈殿物だけになるまで繰り返しましょう。
⑤
手順④で取り出した黒い粒をそのまま日当たりの良いところに置き、粒がサラサラになるまで乾燥させます。
途中で少し振ってやると早いです。
急いでいるときはキッチンペーパーに乗せ、風で飛ばないように深めの器に重りを載せて日なたに出しておくとあっという間です。
⑥
手順⑤の黒い粒にセロテープを軽く押し付け、少量くっつけたら、予めカットしておいた透明プラスチックの板に貼り付け、プレパラートを作ります。
このとき、厚みができないように薄く貼るのがポイントです。
何枚か作っておきましょう。
⑦
作成したプレパラートを顕微鏡やマクロレンズを取り付けたスマホを使って観察しましょう。
このとき、下からのライト(照明)は切り、懐中電灯などで上側から光を当てるのがポイントです。
デスクライトや部屋の照明、窓際に移動して自然光で観察するのもOK。
(日光を見ないように注意してください)
そして必ず写真やスケッチで記録しておきましょう。
【注意!】
次の画像のように、鉱物が土をかぶっているような状態の場合は、手順②③が不十分です。
特に手順②で石を押し潰すとき、もう少し力を入れてやってみましょう。
結果のまとめ方
実験したことをデータや言葉で表して、見やすいようにまとめるのが「結果」。
手順⑦で撮った写真やスケッチと共に、気づいたこと(鉱物の形状、色、透明感の有無など)を書き出し、まとめていきます。
例えば、見つけた鉱物の特徴で分類する、数を記録するなど。
「白・透明感あり・角ばっている」が3個、「黒、透明感なし、棒状」が11個など数えてみましょう。
低学年の子は自分の言葉で大丈夫。
「丸っこい」「カクカクしている」「尖っている」など自分で決めた基準で分類してみてください。
高学年なら百分率(%)で表してもいいでしょう。
この方法なら、応用編で紹介する他のサンプルとの比較も可能になります。
できれば表を作った方が、見やすいし高評価につながりやすいですよ。
1つの視野で見える物だけ数えてもいいですし、ちょっと大変ですが、プレパラートを動かしながら2視野分あるいは全体など、広範囲をカウントすると精度が増すのでおすすめです。
…というのも、Uniが撮った写真を見てもらうと理由がわかります。
「学校での扱い」の項の画像には「石英」がありますが、本項の画像だと黒い棒状の「角閃石」や角ばった粒のある「黒雲母」が多く見られるように、1つのプレパラートでも場所によって偏りが生じるからです。
レンズの視野や、ピントの合わせ方(鉱物なので厚みがあるため)によって見え方が変わってくるので、いろいろ調整してみるのがおすすめですよ。
撮った写真を使って数えると簡単ですね。
また、自由研究を成功させるにはデータをたくさん取っておくことが大切。
写真や気付いたことのメモなど、どれが何の写真なのかがわかるように、記録を取ったら書き込んでおくようにしましょう。
手順①で重さを調べた人は、手順⑤で取り出した黒い粒の重さも量ってみてください。
軽すぎて量れないときは、手順①~⑤を何回か繰り返し、黒い粒を集めましょう。
鹿沼土に何%の火山灰が含まれていたのか、調べられますね。
考察のやり方とヒント
自分が集めたデータから何がわかるのか、どんなことが推測できるのかを考えるのが考察です。
さらに、実験を通して生じた疑問を調べて付け加え(調べ学習)、自分の気付きにプラスして考察していく方法もあります。
慣れないと難しいかもしれませんが、「こんなことが言えるかな」と思い付いたことに対して、自分で反論してみるのも考察上手になるための近道。
反論が見つからない「推測」は、アタリの可能性が高いですね。
調べ学習がヒントになることもあるので、図鑑やインターネットなどを活用するのもおすすめです。
以下に今回の実験でできる考察のやり方やヒントをあげておくので、参考にしてくださいね!
調べた鉱物の分類(同定)
まず取り掛かりたいのが、鹿沼土に含まれていた鉱物の種類の特定です。
データを整理して、どんな鉱物が見えたのか、調べてみましょう。
例えばこんな感じ(画像参照)。
同じ色の矢印や丸で指名した鉱物が、同じ種類です。
ちなみにこの写真、スマホでプレパラートを撮影し、その画像を拡大しただけ。
マクロレンズがなくても、結構見えるんですw
鹿沼土だけでなく、火山灰に含まれる一般的な鉱物のリストをあげておきます。
【 無色鉱物 】
- 石英(セキエイ)
無色透明~白色で、いろんな方向から割れているものが多い(ゴツゴツした感じ)が、きれいなものは六角柱状になる(例:水晶) - 長石(チョウセキ)
白色~灰白色で、特定の面で割れやすい性質を持つ。
カリ長石と斜長石に分けられ、乳白色の美しい石は❝ムーンストーン(月長石)❞と呼ばれ、パワーストーンやアクセサリーとして人気がある。
【 有色鉱物 】
- 角閃石(カクセンセキ)
黒くて細長く、角柱のように角がはっきり見える物が多い - 輝石(キセキ)
角閃石よりも茶色っぽく、柱状。 - カンラン石
黄緑色~褐色で透明感がある。不規則に割れている物が多いが、大きいものは柱状。
透明で黄緑色のものは8月の誕生石❝ペリドット❞と呼ばれる。 - 黒雲母(クロウンモ)
黒~褐色で、薄く剥がれるように割れるため、六角形の板状のものが多い。 - 磁鉄鉱
黒くて光沢があり、形は不規則(きれいだと八面体になる)。
磁石にくっつくので分かりやすい。砂鉄のこと。
上記の画像を例にとると、
黄色:角閃石
赤色:石英
緑色:カンラン石
青色:黒雲母
という感じ。
スマホの画像を拡大しただけなので絶対合っているかといわれると辛いですが、判別できそうなものだけカウントしていっても良いと思います。
もっと詳しい画像で見るなら、岐阜聖徳学園大学の「火山灰鉱物標本解説」がおすすめ。
実際に見える形状に近い写真が掲載されています。
説明付きなら徳島県立博物館「企画展ミネラルズ」がおすすめ。
漢字にフリガナが付いていて、鉱物の見分け方も紹介されています。
「これだ!」と判定するのが難しい場合は、推測でも大丈夫。
でも、そう考えた根拠(それも考察です)を石の特徴と併せて必ず書いておきましょう。
磁石があれば、くっつくものがないか調べてみるのも良いでしょう。
(直接つけると掃除が面倒なので、磁石をビニール袋に入れて近づけるのがおすすめ。)
くっついたものが磁鉄鉱です。
見つけた鉱物を図にして特徴を書き込み、図解するのもいいですね。
できれば、どんな鉱物がどのくらいの割合で含まれていたのか、表にまとめてみましょう。
高学年なら百分率にし、円グラフにするとわかりやすくなりますよ。
調べ学習でボリュームアップ
すでに紹介した「鉱物の特徴」も調べ学習の1つですが、もう少しプラスできることはないか、考えてみましょう。
自分が興味のあるテーマで深堀してみてくださいね。
どんな風に調べ学習を進めればよいか、ヒントを書いておきましょう。
まず1番目のテーマ。
鉱物は何からできているのか、正体を調べるのもおもしろいです。
少し難しくなりますが、例えば石英なら二酸化ケイ素(化学式:SiO2)。
磁鉄鉱なら四酸化三鉄(化学式:FeFe3+2O4)からできています。
中学生なら元素の名前を理科の教科書で調べてみてもいいですね。
さらに、2番目のテーマとして、これらの鉱物がどのような岩石の構成要素になっているのか、鉱物と岩石の関係を調べるのも良いでしょう。
どの岩石がどういった鉱物を多く含んでいるのか、円グラフを使うなど工夫して見やすくするといいですね。
また、鉱物は私たちの生活の様々な場面で利用されています。
3番目のテーマとして、鉱物の利用の例や価値を調べるのもおすすめ。
身近な題材になるので、低学年向けのテーマです。
例えば、前項のリストでも少し触れましたが、水晶や長石・カンラン石のように美しい鉱物は単体で宝飾品としての価値を持ちます。
一方、複数の鉱物が集まった❝岩石❞の状態で利用されている物もあります。
ビルの外壁や墓石、電化製品の絶縁体など、用途を調べると意外なところで使われていることがわかります。
なぜその用途に使われるのかは、鉱物の色や性質によるところが大きいので、その点に着目して調べると考察が深まりおすすめですよ。
そして、4番目のテーマとして取り上げたいのが、火山灰が引き起こす被害について。
桜島が噴火したとき、道路や車に火山灰が降り積もった映像がニュースで流れるのを見たことがないでしょうか?
※ 見たことがない人はYouTubeで探してみよう!
この降り積もった火山灰が、なぜ問題になるのでしょう?
実験をした人はピンとくると思いますが、火山灰の中には鉱物が含まれているんでしたね。
鉱物の性質や形状を考えれば、火山灰が人体や日常生活に与える悪影響を想像できるかもしれません。
これは理科だけでなく社会科の問題意識も持てるので、多角的な捉え方ができる良いテーマです。
身近なことに直結するので、低学年向けの調べ学習としても最適。
想像以上の大きな被害があるので、対策方法も併せて調べるのがおすすめですよ。
もっと実験をプラスしてみる
いろいろ調べたら、別のことも調べたくなった…という子、研究者向きです!
そもそも研究とは、ある実験の結果や考察から生じた別の疑問を解き明かすため、新たな実験を繰り返すことで成立します。
今回紹介した鉱物の実験も、簡単な別の実験を組み合わせることで、さらにおもしろい研究に仕上げることができます。
別の実験に興味がある人は、下記応用編もご覧ください!
また、全く違う自由研究も見たい方はこちらのリストをどうぞ!
短時間で終わる実験、ほったらかしでできる実験などいろいろありますよ。