障害者が飛行機に乗るには?予約や障害者割引、医療品の持ち込み時に注意すべきポイントまとめ

移動が難しい人にとって、長距離を短時間で移動できる飛行機は強い味方!
「障害者割引運賃」を利用することも可能です。

現在、すべての航空会社が障害を持つ人をサポートしていますが、その方法やシステムは様々
必要な手続きや証明書、登録作業など、準備しておくべきこともあります。

そこで、この記事では障害のある人が飛行機に乗る前に知っておきたいことをまとめました。
飛行機を利用する際の参考にして頂けたら嬉しいです。

内容は執筆時の情報によるものです。最新情報は各公式サイトをご覧ください。
また、障害の種類や度合い、搭乗する航空会社・便によって異なる部分もあります。
予約・搭乗時は必ず航空会社の公式サイトにてご確認ください。

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予約の方法

ほとんどの航空会社でインターネットでの予約・購入が可能です。
どこからでも利用できるので、便利ですよね。

ANAなど大手FSCではインターネット予約と同時に、身体の状況を登録しておくと当日のサポートも申し込めます。
障害の程度によっては専用デスクを介する必要がありますが、予約時に登録できる情報は伝えておきましょう。

ただし、障害者の利用時に次の規定を設けている航空会社もあります。

これらの規定は、万が一の場合に乗客すべての安全を確保するために設けられたものですが、障害の程度を一律に判断するため、必ずしも納得のいく規定とは言えません。

また、障害者が提供しなければならない情報が多すぎ、プライバシーに抵触すると考えられるケースもあります。

だからといって、航空機を安全に運行するための条件がすべてオープンにされているわけでもありません。
障害者側が提供する情報を取捨選択することも難しいわけです。

そして、条件を満たさなかった場合、残念ながら当日の空港で搭乗拒否されるという事態も過去に起きています。

いきなり不快な内容になってしまいましたが、お伝えしたいのは「不安や疑問があったら早めに航空会社に問い合わせる」方が良い、ということ。

こちらが「規定を守っている」「迷惑かけないから大丈夫」と思っても、航空会社側が安全運航に支障があると判断したら乗れないからです。

ジェットスターのように、1人で搭乗できる(介助なし)場合の条件を明示している航空会社もあります。
特別なお手伝いが必要なお客様 | ジェットスター (jetstar.com)

事前にチェック、もしくは問い合わせて確認しておきましょう(問い合わせ先は次項参照)。

さらに、体の不自由な人が予約する時の注意点もあります。
気を付けておきたい規定をあげておきますね(該当しない航空会社もあります)。

  • 介助の必要な障害者が搭乗できる人数または障害者割引の座席数は、飛行機の大きさなどにより決まっていることがある(非公表)。
    ※ スカイマークは障害者割引の座席数制限なしと明言している。
  • オンラインの場合、障害情報などの事前登録をしていないと受けられないサービスがある。
    (障害者割引の適用、オンラインチェックインなど)
  • 介助(移動・食事・トイレ・投薬などの個人的な事柄)が必要な場合は付添人が隣席に座る必要がある。

また、杖や義手・義足などの補助具、補聴器や医療機器の持ち込みについてはほとんどが持ち込み可能ですが、貨物室に預ける場合もあります。

チェックインカウンターや手荷物カウンターなどで預け入れ手荷物を預けてしまった後だと面倒なことになるため、

  • 予約時に持ち込み可能か分からない場合は問い合わせておく。
  • 機内持ち込みにしたい規制対象品がある時は、預け入れ手荷物を預けるときに確認し、持ち込めない場合は預け入れ荷物に入れて預ける。

などの対応をするのがおすすめです。

さらに、保安検査場でも持ち込み品のチェックが必要です。
一般の列に並ぶ前に係員に申し出ると良いでしょう。
このとき、医師の診断書などや装具の仕様書などがあるとスムーズですよ。

一方、車椅子については事前の申請が一般的
貨物室に収容できるか、予約便にスペースがあるか…等の確認が必要だからです。

情報を記入したWebフォーム(書類)をメールに添付して送信する、電話で伝える…などの航空会社により方法が指定されています。

特に充電バッテリーが付属したもの折り畳めないものは航空輸送可能な範囲かの確認が必要なため、これらの申請手順を見落とした場合は、自分から問い合わせておいた方が安心です。

車椅子の確認をしてから、電話によって予約を行うケースもあります。
オンライン予約の方が割安なLCCもありますが、この場合は電話を介して予約してもオンライン予約の価格で購入できるケースがほとんどです。

したがって、車椅子を利用する時は、インターネット予約よりも電話で情報を伝達しつつ予約を行う方がスムーズなことも多いのです。

航空会社のマイレージ会員などになり、障害についてあらかじめ申請しておくと、以降の手続きがぐっと簡単になることが多いので、利用するのもよいでしょう。

なお、航空会社には体の不自由な人をサポートする専用の相談窓口が設置されています。

不明な点、不安な点があったら迷わず相談するのがおすすめ。
快適な空の旅を円滑に実現するためにどのようなサポートが受けられるのか、必要な手続きはあるか聞いておきましょう。

次項をご覧くださいね。

サポートが必要な場合の案内&問い合わせ先

航空会社では体が不自由な方への案内窓口を設けています。

ケースごとに詳しい案内が掲載されているので、初めての方は予約の前に下記のリンクを見ることをおすすめします。

航空会社が提供するサポートの詳細や、提出が必要な書類のフォームなど、知りたい情報のほとんどが盛り込まれています。

それでもわからない個別の相談がある場合は、電話やチャット、メール送信フォームなども用意されています。

耳や言葉の不自由な人にはFAXや手話通訳付きのテレビ電話があるところも。

オペレーターに繋がるまでに時間がかかるので、急ぎでない場合はメール・FAXがおすすめです。

併せてサポート関連の問い合わせ先も掲載しておきますね。

なお、予約済みの場合は予約番号など詳細がわかるものを用意してから電話しましょう。

障害者割引について

航空会社には「障害者割引運賃」が用意されています。

価格のほかにもメリットがありますが、初回は手続きが必要などのデメリットもあります。

もちろん、障害者割引運賃で航空券を買わなくても、空港や機内でのサービスは受けられるので、割引率や利用方法、メリット・デメリットを考慮した上で利用するか決めるのがポイントです。

後述しますので、チェックしてくださいね。

なお、ピーチアビエーション、ジェットスターなど一部のLCCには障害者割引の価格設定がありません

でも、元々の航空運賃が安いですし、割引がないだけでサポート対応はしているので、安心してくださいね!

予約は航空会社に会員になって障害とその詳細を登録しておくか、非会員の場合は証明書を郵送または当日に提示するなどして申し込むことで、割引が適用になります。

また、前者の場合はオンラインチェックインなどが利用できますが、後者の場合は空港カウンターでのチェックインが必要なことが多いです。

ネット予約では運賃区分で「障害者割引」を選択して申し込む方法のほか、スターフライヤーのように、ネット予約後に専用申し込みフォームを送信・電話することで割引が適用になるところもあります。

頻繁に飛行機を利用するなら、情報を登録しておいた方がメリットが大きいでしょう。

航空会社により確認方法が異なるので注意してくださいね。

ちなみに国際線には障害者割引運賃はありません

障害者割引の対象と割引率

障害者割引の割引率は、航空会社によって20%~40%程度と差があります。
でも、割引率だけで判断してはダメ

理由は、2023年から割引プランが変更になったJALで説明しますね。

例えば、早期割引適用のJAL「スペシャルセイバー」は普通運賃から5~50%割引になるプランですが、このディスカウント価格からさらに障害者割引20%が適用になります。

半額からさらに2割引きというと、元の料金の実質6割引きだからスゴイお得感!

つまり、航空会社によって障害者割引を

  • その時期の基本となる運賃から割り引く方式
  • ディスカウント価格から割り引く方式

の違いがあるということ。

このため、普通運賃から見たトータルの割引率は繁忙期だと小さくなる…のように変動するわけです。

…が、価格面での選択肢が一般の購入者と同じになるのは良いことですよね。

加えて、障害者割引のメリットは価格面だけではありません。
次項も併せてご覧くださいね。

一方、障害者割引の対象は決められています。

その一つが年齢で、12歳以上であること。
12歳未満は小児運賃を適用した方が割引率が高く(25%以上)、お得だからです。

※ ANAの「障がい者割引運賃」各種の適用年齢は満3歳からです(2024年2月1日より)。
参考:小児ディスカウント|ANA

さらに、公的機関が交付した次の手帳を提示できることが条件。
搭乗当日に持参し、有効期限内であることも必要です。
第1種・第2種の区分関係なしが一般的です。

  • 身体障害者手帳
  • 戦傷病者手帳
  • 療育手帳
  • 精神障害者保健福祉手帳

また、これらの手帳を持つ障害者本人と同時に搭乗する介護者(介助者・付添人。12歳以上)1名にも障害者割引が適用されます。

障害者本人が小児運賃適用の場合でも、介護者1名に障害者割引が適用に。
でも、座席を購入しない乳幼児(3歳未満)だと適用にならないので注意してくださいね。

メリット・デメリット

初めに「障害者割引」のメリット・デメリットをざっと確認しておきましょう。

【 メリット 】

  • 同じタイミングで購入する一般運賃よりも安い。
  • 有効期限が1年間あり、取消手数料割安または無料などになることが多い。
  • 同じ便に乗る介護者1名も同じ価格・サービスが受けられる。
  • わざわざ申告しなくても、サポートの手を差し伸べてもらえる。
  • マイルも貯められる。

【 デメリット 】

  • 障害者割引より早割などの方が割引率が高い。
  • 障害者割引を適用する手続きが必要。
  • 空港カウンターでないとチェックインできない場合がある。

❝割引❞というとどのくらい得か気になるところですが、どこの航空会社に対しても言えることは、繁忙期のチケットでも割引が適用されるという点。

需要のある時期に出発日が近づいてから航空券を手配すると正規の料金を払うことになり、あまりの高額に驚きますよね。

そんなタイミングでも障害者割引が効くので、お得感があるというわけ。

また、航空券の有効期限が1年あり、同一区間であれば変更できる場合も多いです(差額が生じる場合あり)。

便出発の時刻までに手続きすれば、取消手数料が無料だったり一般より安かったりするところもあります。
※払い戻し手数料は別

表面化しにくいメリットではありますが、体調を崩しやすい障害者には嬉しいサービスです。

また、空港や機内で多くを語らなくても、サポートを受けやすいという点もメリットといえるでしょう。

座席の位置やチェックイン、空港内での移動なども楽に行えます。

一方、ほとんどサポートがいらないという人や体調が安定している人は、障害者割引を利用するメリットがあまりないかもしれません。

価格面でも早割を活用した方が割引率が高いことが多いですし、障害者手帳の登録や提示といった手続きも不要です。

空港や機内でのちょっとしたサポートであれば申し出るだけでも十分なので、困ったときに声を掛ければ済みますしね。
※ 車椅子などの特殊な荷物や介助が必要な場合は、予約時に連絡しておきましょう。

また、オンラインチェックインや自動チェックイン機が利用できないことがあります。

カウンターでは混雑していても便宜を図ってもらえることもありますが、一般客の視線が気になる人もいるのではないでしょうか。

なお、大手航空会社のように会員になったうえで障害情報も登録しておくと、オンラインチェックインが利用できるようになります。

頻繁に飛行機を利用する人は障害者割引の利用に関わらず、登録しておくと各種手続きが簡単になりますよ。

このように、障害者割引は特徴を理解し、吟味したうえで利用するのがおすすめです。

搭乗当日の流れ

まずは、チェックイン(=搭乗手続き)を。
オンラインが利用できる人は便出発の24時間前から手続き可能です。

もちろん当日空港に行ってからでも大丈夫ですが、混雑していることもあるので早めに到着してくださいね。
自動チェックイン機や空港カウンターでもOKです。

障害者割引の適用を受けるために手帳の提示が必要な人は、スタッフのいるカウンターへ行ってください。

預け入れ手荷物の手配も続けて行いましょう。
空港での流れはこちらの記事をご覧ください(^-^)

スタッフのサポートが必要な人や制限がある器具を持ち込む場合も空港でのチェックインを求められることが多いです。

空港や機内でのサポートが必要な人は、チェックインカウンターで伝えておくことを忘れずに。

車椅子を預ける場合は、ここで空港用の車椅子に乗り換えるのが一般的です。

また、チェックインや保安検査場の通過時刻も、一般客よりも早く指定されることが多いでしょう。

このため、空港には早めに到着し、体に負担がかからないように余裕をもって行動するのが◎。

事前に申告できるものは済ませておき、当日は各所での手続きがスムーズにいくようにしておくのがおすすめです。

特に、手荷物の中に一般客の持ち込み規制品がある場合は、事前に確認して航空会社の❝お墨付き❞をとっておきましょう。

空港担当者の判断が微妙になりそうなものは、予約時に航空会社から持ち込みを許可する書面やメールをもらっておき、カウンターや保安検査場で見せるくらいのことをした方が良いケースもあります。

…というのは、保安検査場で「航空会社に確認を取ったのに、持ち込みを拒否された」という事例も少なからずあるからです。

航空機の安全を守るためとは言え、障害者側にばかり負担を強いるのは良くないですが、できる限りの準備と工夫はしておく方が良いと思います。

さて、指定の時間までに保安検査場を通過できれば、一安心です。

歩いて搭乗できない人は、チェックインカウンターで搭乗の手段を告げられていると思うので、空港スタッフに任せましょう。

搭乗方法がボーディングブリッジだと比較的移動が楽ですが、タラップの場合は便により「階段昇降機」「リフト付きタラップ」「リフト車」などを利用することになります。

どの方法で搭乗するかは当日にならないと決定しないので、搭乗手続き時に確認しておくと良いでしょう。

なお、障害者や乳幼児連れの人などは、一般客が飛行機に乗り込む前に❝優先搭乗❞が可能です。

通路を通りやすいうちに搭乗を済ませた方が良い人は、搭乗口にいるスタッフに声を掛けておきましょう。

優先搭乗の対象者は機内の準備が整ったら改札してもらえるので、スタッフに言われた時刻までには搭乗口付近に行くようにしてくださいね。

車椅子、医療機器・装具の持ち込みについて

現在の空港・航空会社では非常に厳しいセキュリティチェックが行われています。

先端が尖ったもの、可燃性・爆発性のあるバッテリーやボンベ、液体、機体や人体に影響を及ぼす化学物質など、凶器や脅威となり得るものはすべて持ち込みの規制対象。

量や大きさなど細かくチェックされます。

また、それを調べるための金属探知器やX線検査も欠かせません。

しかし、これらの中には障害者の生活に欠かせない装具や医療器具、取り外しができないものも少なくありません。

そこで、障害者の命や生活に欠かせない物品を例外として持ち込み可能としています。

ただし、チェックを受けなくて良いわけではありません。
現在の法律では、すべての搭乗者に保安検査を受ける義務が課されているのです。

でも、疑われて(!)持ち込めなかったら大変ですよね。

医師の診断書(14日以内のもの)や器具の仕様書などを持参することで、チェックをスムーズに通過できるようになります。

特に車イスは要注意!
大きさや重さが貨物室に収まるかだけでなく、電動の場合はバッテリーの容量なども問題になりがちです。

医療用具・装具や医薬品、杖や補聴器といった補助具などの持ち込みについてはこちらの記事🔗をご覧ください(^-^)

また、空港での保安検査をスムーズに通過するために知っておきたいことについてはこちらの記事🔗をご覧ください。

おわりに

本記事を執筆するにあたり、いわゆる「障害者」をどう表現するか悩みました。

「障害者」「障碍者」「障がい者」…?
これらの表記は内閣府でも検討中で結論が出ていません。

一方、❝体の不自由な方❞には精神障害も含まれるのか、❝サポートが必要な方❞では乳幼児連れの人も含んでしまう…など表現の範囲が本記事に適切でないこともあり、検索した方の要望に応えられない懸念もありました。

アメリカでは旧来の❝handicapped person❞から、人を優先的に表記することで人権に配慮した言い方とされる❝persons with disabilities❞が主流になっています。

また、「支援が必要な人」という意味で❝special needs❞も使われますが、こちらは広義に捉えられることもあり、世界でも議論が繰り広げられている現状です。

そこで、悩んだ挙句、本記事では最も普及している「障害者」で統一することにしました。
不快な人もいると思いますが、他の表記にも一長一短あることに変わりはない、と考えたからです。

社会から障壁(障害)を与えられ、権利を奪われている人たち…そんな風にも見えてきました。

飛行機に乗る。
それだけのことなのに、障害者の目の前には様々なハードル現れる。
そのことに改めて気付きました。

障害者の搭乗には❝安全な運航❞との両立が困難という理由から、様々な制限が課されている現実があります。

当記事ではあくまでも「障害者が円滑に搭乗するための方法」として紹介するものであり、これらの制限を容認もしくは批判するものではありません。

インクルーシブルな社会を実現させるには、企業はもちろん、一瞬の接点しか持たない❝通りすがり❞の人の力もたくさん必要です。

誰もが心から楽しめる旅を。
Bon voyage!

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