夏休みの自由研究を最速で終わらせたい人におすすめするのが、宝石のように美しい鉱物探し。
今回は基本編に続き、さらにボリュームアップしたい人向けのアイデアを提案します。
基本編にプラスしても一日で終わる簡単実験。
でも、しっかり研究できる満足感もありますよ。
合計300円でも応用編まで完成しちゃうコスパの良い実験方法も紹介します!
実験方法は【 基本編 】と同じ♪
土の中から火山灰(鉱物)を取り出しますが、今回は土の種類や鉱物へのアプローチを変えて自由研究を進めていきます。
実験を始める前に基本編をお読みくださいね!
応用① いろんな土を調べよう
鉱物は火山の噴火によってマグマが細かくなった「火山灰」に含まれることは、基本編で紹介しました。
そして、絶対に火山灰が入っている「鹿沼土」からサンプリングを行いました。
でも、火山灰を含む土は鹿沼土だけではありません。
そこで、いろんな土や砂の中に鉱物が含まれていないか調べてみましょう。
材料
例えば、
…などがサンプルとしておすすめ。
赤玉土は本記事の後半でも触れますが、火山灰を含んでいるので適しています。
また、バーミキュライトに含まれるキラキラした物質は、鉱物の一種である「雲母」が加工されて生じたもの。
鉱物そのものではありませんが、きれいなので観察してみると良いでしょう。
また、夏休みなどで旅行に行くなら、旅先の山や川、海で少量の土を持ち帰るのもおもしろいですね。
山の土砂は火山性のものであれば間違いなく火山灰が含まれています。
日本には111の活火山がありますから、周辺に行くことがあったらチャンス!!
かなり期待できる土ですね。
川砂は雨水によって運搬された山肌の土砂が堆積したものですから、結構面白いです。
地域によっては河原に転がっている石にも火山の痕跡がありますから、写真を撮っておくと良いかも…です。
ビーチの砂は、さらに川が運んだ山の土砂の堆積物も含まれます。
海流に乗って遠い地域の土砂が運ばれていることもありますし、海底火山の噴火により軽石が漂着していることもあります。
本筋から外れますが、貝殻やサンゴなど鉱物以外も観察できるかもしれません。
地域によって違いがあるので、あちこち採取して比較すれば、それで立派な自由研究が成り立ちますね。
採取場所近くの資料館や博物館を訪れば、ヒントが隠れているかもしれません。
考察を書くときのネタにもなるので、ぜひ立ち寄ってきましょう。
特に旅行の予定がない人は、砂場の砂を使う方法もあります。
砂場の砂は川砂・山砂・海砂などをブレンドしていることが多いです。
砂鉄集めをしたことがある人もいるかもしれませんね。
砂鉄は磁鉄鉱というりっぱな鉱物の仲間です(詳しくは基本編参照)。
さらに言ってしまえば、日本は火山でできた国。
関東ローム層を始め、九州南部のシラス台地など、活火山の近くに行かなくても火山灰が降り積もった上で暮らしていると言っても過言ではありません。
家の近くにもこういった火山灰を含む土が風に乗って運ばれてきているかもしれませんね。
もちろん、サンプリングの場所によっては鉱物(火山灰)が含まれないこともあるので、あくまでも別記事の【基本編】をやっておき、その比較材料として用いましょう。
また、土砂や石の持ち出しが禁止されている場所もあります。
土地所有者や管理事務所などで確認しておくのが良いでしょう。
調べたい土・砂が用意できたら、基本編で紹介した❝椀がけ法❞で火山灰を取り出してみてくださいね。
まとめ方
さて、取り出した火山灰を基本編のように顕微鏡やスマホで観察し、データを集めましょう。
基本編の鹿沼土のデータと比較して考察するのがおすすめです。
赤玉土は入手しやすく、火山灰を含むことが確実なので、ぜひやっておきましょう。
基本編のように観察する量(視野の範囲やプレパラートの枚数)を決め、同じ条件でデータを揃えるのが研究の鉄則です。
火山灰を取り出す前の土の量と、そこから取り出せた火山灰の量を重さで比較するのもいいですね。
また、サンプリングした場所により、火山灰に含まれる鉱物が大きく変化しているかもしれません。
火山灰は大きく「有色鉱物」と「無色鉱物」に分けられるので、この2種類の比率でまとめるのもおもしろいでしょう。
九州の桜島の火山灰は鹿沼土の火山灰に比べると見た目でも明らかな違いが見られるのですが、他の場所でも思わぬ発見があるかもしれませんよ。
なお、関西圏には火山が少ないので、火山灰を含む土を自然環境から採取するのが難しいかもしれません。
でも、観察できなかった理由として考察できますし、見えたら見えたで風や河川の運搬などの影響を示唆することもできます。
たとえ思うような結果が得られなくても、がんばって実験したことが「1つの結果」であることに変わりはありません。
なぜ思ったことと違ったのかを考えることが大切。
まずは言葉で表していくと、意外と良い自由研究になりますよ。
応用②調べ学習をプラスしよう
もっと実験をプラスするのも良いですが、鹿沼土の他に1つ2つ実験したら、あとはそれを掘り下げていくのも自由研究の醍醐味です。
図鑑やインターネットをフル活用して火山灰の秘密を探っていきましょう。
おすすめサイトは各項で紹介します。
小学校6年生なら教科書に火山についての単元が載っていますから、その情報を足掛かりに調べるのも良いですね。中学生なら理科の資料集が大活躍しますよ。
でも、どこから始めたら良いのかわからない人のために、ここでもヒントをプレゼント。
気になるテーマを選んで掘り起こしてみてくださいね!
観察した火山灰のルーツを探る
今回観察した鉱物は火山灰です。
では、その火山灰がどのようにして採取した場所や採取したものに含まれるようになったのか、調べてみましょう。
火山灰はもともと地球の奥深くのマグマが、火山の噴火という大きなエネルギーによって地表に降り積もったものです。
でも、現在でも活発に噴火している火山は限られていますよね。
しかも観察した火山灰の鉱物は、鹿沼土のように土(粘土)に覆われていることもあります(画像参照)。
火山灰に粘土が付着するには相当の時間が経過している証拠。
そこで、まずは鹿沼土とは何なのか、その正体を調べてみてください。
実は何万年も前の赤城山の噴火によって放出された火山灰であることがわかると思います。
さらに長い年月をかけてその上に別の土砂が積もり地層が形成されたこと、地殻変動によって火山灰の堆積層が露出している地域があること、などを調べてみましょう。
もちろん、今現在噴火している山やその地域で採取したなら、ルーツは明らかですね。
その山がどんな火山活動をしているのか、調べるのも◎。
時間があれば鹿沼土の火山灰に付着していた粘土の正体も調べてみましょう。
同様にして、自分が観察した他の火山灰のルーツも調べてみましょう。
近くに火山や温泉があるところは探しやすいかもしれませんね。
高学年や中学生なら、地形や偏西風・局地風などの影響も併せて考察するのもおすすめです。
※局地風:六甲おろし・赤城おろしのように特定の地域に吹く風
火山灰の用途を調べる
火山灰には、海岸の砂や落ち葉が堆積した腐葉土などとは違う特徴があります。
そこで、火山灰や火山灰を含む土の用途を調べてみましょう。
これらの特徴を調べると、それぞれ適した用途に使われていることがわかります。
同じ園芸用の土でも鹿沼土と赤玉土にはどんな違いがあるのでしょうか?
また、火山灰は園芸用土以外にも使われています。
例えば洗顔フォーム。
でも火山灰含有であるがゆえに、使い方には注意が必要です。
実際に火山灰を観察した皆さんなら、理由がわかるかもしれませんね。
ちなみに、基本編では鉱物そのものの利用方法を調べる提案をしています。
併せて取り組んでみるのもおすすめです。
噴火やマグマの性質の違いと鉱物
基本編で触れたように、ダイヤモンドと黒鉛(鉛筆の芯の主成分)はどちらも同じ元素「炭素(元素記号:C)」からできています。
これらはマグマが噴き出すときの条件の違いによって、全く別の物質になるわけです。
逆に言うと、生成された鉱物を見れば、噴火の状態やマグマの性状を推測できるわけ。
噴火のタイプは、
- 噴煙や噴石を噴き上げる「激しいタイプ」
ドロドロのマグマ
例:雲仙普賢岳、桜島 - 山肌をマグマが遠くまで流れていく「穏やかなタイプ」
サラサラのマグマ
例:伊豆大島、キラウェア火山(ハワイ)
噴火の違いはマグマの性質によって決まりますが、これが様々なことに影響を及ぼします。
「山の形」「火山灰の色」「マグマの温度と粘性」などをキーワードに調べてみるのがおすすめです。
さらに、自分が観察した火山灰がどのような条件の噴火やマグマによって作られたのか、考察してみましょう。
手掛かりは「無色鉱物」と「有色鉱物」の割合。
推測してみてくださいね。
火山の災害について調べる
火山列島である日本では、頻繁に火山活動による災害に直面しています。
活発な活動をしている山では、入山規制が行われたり警戒レベルが引き上げられたりしてニュースになることも珍しくありません。
また、温泉地に行くと❝地獄谷❞や❝殺生河原❞のような地名に出くわすことが多いですね。
これは付近に毒性のある火山性ガスが噴出している場所があり、その周辺は草木が生えにくいことが由来です。
(現在でも濃度が高い場所は立ち入り禁止になっています。)
普段は気付きにくい地域もありますが、山や温泉などがあるエリアには、火山が生活に大きく影響することもあるのです。
さらに、実際に噴火が起きれば、甚大な被害を被ることもあります。
火山灰の被害については基本編で触れましたが、火山の噴火による災害にスポットをあてて調べるのもおすすめです。
2014年には御岳山が突然噴火し、尊い命が奪われ、甚大な被害をもたらしました。
噴火の危険と硫化水素に阻まれ、難しい救助活動となったことを覚えている保護者も多いのではないでしょうか。
また、噴火のリスクが高いとされる富士山周辺では、様々な対策が施され、地元では避難訓練も繰り返し行われています。
火山灰から宝石を探す…という当初の目的から離れてしまいますが、火山の一番小さい痕跡である❝鉱物❞から、それを生み出す火山活動にシフトしつつ考察をまとめるのも良いと思います。
現在の義務教育は❝学びを実生活に結び付け、役立てる❞ことを目的にしていますから、理科の実験から災害や社会問題に発展させて研究するのは非常に意義があると思います。
噴火災害については下記のNHKサイトが分かりやすいです。
全国111活火山はどこに 噴火災害の種類 噴火警報と警戒レベルとは – NHK
また、気象庁公式サイトでは日本各地の火山ライブ映像が見られます。
雲が多いと分かりにくいですが、晴れて風のない日には噴煙が確認できますよ。
気象庁|監視カメラ画像 (jma.go.jp)
以上、身近な土から火山灰を探す実験の応用編をご紹介しました。
その他の短時間で終わる実験や水族館へ行ったついでにできちゃう自由研究など、各種テーマはこちらのリストをご覧ください↓