自由研究を簡単に終わらせたい!
…でも、簡単な実験だと内容が薄くなってまとめられないかも。
そこで、小学校・中学校の理科の実験に詳しい当サイト管理人 Uni が、実験の方法から考察までのポイントを徹底解説します!
低学年でも取り組める実験が中心ですが、組み合わせ次第ではいろいろと発展させられますよ!
今回は植物が吸い上げた水に関する実験の簡単アイデアをご紹介。
数時間や数日で終わる実験の失敗しない方法や、研究としての整え方などを伝授します。
具体的には6年生で学ぶ教科書的な実験をベースに、低学年・中学年でも取り組めるよう、各学年の学習指導要領を踏まえて段階別にテーマを提案していきます。
そこにオリジナルの実験を組み合わせて自由研究を膨らませていきましょう。
子供の学習レベルにあった実験なので、無理なく自由研究を完成させられますよ。
テーマ選びに悩んでいる人、必見です♪
その他、学年別や短時間系のアイデアをご覧になりたい方はこちら↓ほったらかしの実験もありますよ!
自由研究アイデア集 | 世界で1つのワガママ旅へ (uni-voyage.com)
実験に取り組む前に
これはどんな実験でも言えることですが、実験前にしっかりと❝予想を立てること❞!
これが自由研究の明暗を分けます。
予想の立て方にも良し悪しがあって、
- ○○になると思う。
というのは、NGです。
良い予想とは、
- △△を見たことがあるから(知っているから/習ったから)○○になると思う。
…のように、自分の知見や経験に裏打ちされる根拠の上に立てられた仮説です。
そして本来の実験とは、その仮説を立証するための手段に過ぎないのです。
自由研究がまとまらずに失敗する人は、この❝仮説を実験で確かめる❞という骨組みが抜け落ちているケースが多々見られます。
逆に言うと、この骨組みさえ成立していれば、実験が失敗に終わっても自由研究としては成功するものです。
今回は植物を使った実験ですが、生き物を扱う実験は短い時間で有効なデータを取るのが難しい傾向にあります。
しかし、本記事では失敗のリスクが少ないものを集めました。
簡単に実験できること…が大前提のものばかりです。
結果を得やすいということは、その反面、実験内容が浅くなりがちで、研究として成立させにくいというデメリットも併せ持っています。
だからこそ、前述の❝予想をしっかり立てて目的を明らかにしておくこと❞が重要です。
特に低学年のお子さんには大人が声掛けをして、「思ったこと」「感じたこと」の根拠を聞き出してあげてください。
そして、データ収集には写真は必須です。
たくさん写真を撮ってください。
また、それが何の写真なのかわかるようにしておきましょう。
被写体と一緒にメモ書きも撮影しておく、画像に書き込んでおく、など方法はいろいろあります。
あとで他の写真と見比べられるようにしておいてくださいね。
なお、今回も実験ごとに関連した内容を何年生で習うのか、文部科学省の学習指導要領に基づき紹介していきます。
学習指導要領を見れば、その学年での標準的な知識力・理解力の目安がわかるからです。
ただ、同じ学年でも使用している教科書や先生によって学ぶ時期に違いがあります。
自由研究を夏休みに行うのであれば、対象学年でもまだ習っていない可能性があるわけです。
もし確実に習ったことに基づいて実験したいのであれば、学習する学年よりも上級生になってから…ということになります。
逆に、学習内容を先取りしたい、夏休みの体験をそれ以降の学習に活かしたい…のであれば、ガンガン実験しちゃうことをおすすめします。
自由研究の目的は❝考える力や問題解決力を養うこと❞にあります。
万が一、失敗しても大丈夫!
失敗のデータもたくさんあれば、立派な自由研究が完成します。
最後までやり切りましょう!!
授業内容との関わり
小学校では学年ごとに様々な植物を育て、観察します。
これらの植物はそれぞれの学年での学習内容に適した特徴のある植物です。
例えば1年生でアサガオ、2年生でプチトマトやヒマワリ、3年生でホウセンカ、4年生と6年生でジャガイモ、5年生でインゲンマメとヘチマ…というのが多いのではないでしょうか。
※ 低学年は理科の授業ではなく生活科での扱い。
それでは、これらの植物を教材として、それぞれの学年でどのような学びが行われているのでしょうか?
3年生では「植物は根・茎・葉から成る」という構造上の共通点を持っていること、4年生では花が咲き種子ができることを季節の移り変わりを通して学びます。
5年生では4年生での学習を踏まえ、インゲンマメを使って発芽や生育の条件を仮説を立てて検証し、どのようにして実や種子ができるのかをヘチマを通して学びます。
ほぼ同時期にメダカを飼育して受精と卵の成長、さらに3学期に人の誕生について学ぶので、5年生は生命の神秘❝発生学❞に触れる機会が最も多い学年です。
(学習時期や教材とする植物は学校によって異なる場合があります。)
6年生では植物に特徴的な「葉でデンプンが作られる(光合成)」と「根から水を吸い上げ、葉から放出している」といった仕組みについて、仮説を立て実験しながら学んでいきます。
細かい話はすべて中学校に行ってからとなるため、6年生では大雑把な事象の扱いのみとなるのですが、実はとても興味深い分野。それをスルーして授業が終わってしまうので、今回紹介することにしたわけなのですが(笑)。
中学校での学びに繋がる知識なので、自由研究を活用し、自分の生きた知識としてぜひ定着させておきたい分野です。
さて、その中学校では科学の授業として何かを育てることは少いのですが、教材として植物を使う単元は多くあります。
そして、植物の分類や呼吸、光合成などの仕組みを通して、人や環境との関わりにも知識を深めていきます。
本記事に関する分野ではイネ科の植物やトウモロコシ、ホウセンカなどを使って植物組織の役割や種による違い、また、ツユクサを使って植物の水分調整方法を学びます。
これらに関する実験は各項にて詳しく紹介しますが、身近な植物のヒミツに驚きと感動を覚えることでしょう(私だけ??)
今回紹介する実験は教科書に掲載されているものも多いので、それだけでは研究として弱くなってしまうため、上の学年の学習内容に発展させたり、他分野へも踏み込んだりしています。
それにより研究内容に深みを与え、応用性も併せ持てるように提案していきますので、お好みの難易度で取り組んでくださいね。
簡単に宿題を終わらせたい人は基礎実験だけ、しっかりレポートしたい人は実験を組み合わせたり発展させたり…など、年齢や目標に応じて使い分けていきましょう。
また、花粉を使った植物実験はこちらの記事でまとめています。
興味がある方、ご覧ください!
【実験①】水の通り道を調べよう
今回紹介する中で最も簡単な実験がこれ。
植物に色水を吸わせて、茎の中を水がどのように運ばれているのかを調べるのがベースの「吸い上げ実験」です。
顕微鏡がなくてもOK!
用意するものも少ないので、簡単に済ませたい人や低学年・中学年の子にピッタリです。
また、後述する別の実験と組み合わせれば、自由研究の内容が充実します。
ベースの実験としてやってみるのも良いでしょう。
材料
【 準備するもの 】(詳細は本文参照)
- 植物
- 着色料
赤い色素がおすすめ。粉末・液体どちらも可。 - 標本を貼るもの
透明プラスチックの板、またはスライドガラスなど
顕微鏡を使わないのであれば、色の濃い画用紙でもOK - ビンまたはビーカーなどの容器
大きめの瓶詰の空き容器が最適(ジャムやピクルスなど)。 - スマートフォン・タブレット、または顕微鏡
- カッター、セロハンテープなど
この中で買わないと揃わないものは、「着色料」と「標本を貼るもの」あるいは「植物」かと思います。
その他含めて、ちょっと補足しますね。
まず、着色料。
これを使って植物を染める染色液を作ります。
安価で入手しやすいのは、スーパーマーケットでも売っている食品用の色素「食紅」です。
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いろんな色が売られていますが、植物が緑色なので反対色の赤が見やすくておすすめ。
他の色もあれば実験の幅が広がりますが、1色だけなら赤にしましょう。
余ったらお菓子作りやサイダーなどに入れて無駄なく活用(笑)。
粉末の食紅の場合、1000mlの水に3gの割合で入れてよく混ぜ、完全に溶かしたものを着色料とします。
多少薄くなりますが、1500mlに3gでも観察できます。
Uniはケチってこの濃度を使用。
実験方法で掲載している写真も、この染色液を使ったものです。
この範囲の濃度なら問題なく染色できますが、実験を通して同じ割合の染色液を使ってくださいね。
染色液はきれいに洗ったペットボトルを使うと作るのも保存も楽。
フタをしっかり閉めて、よく振りましょう!
なお、時間を短縮したい人は植物の染色に特化した製品を使う方法もあります。
おすすめは『切り花着色剤ファンタジー』という商品。
最短15分で染まります(茎)。
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また、自由研究用の着色剤キットも売られているので、これを利用しても良いでしょう。
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ファンタジーの場合、花を染めるには原液を吸わせると書かれていますが、今回の実験は茎がメインなので、ケチって希釈してもよく染まります(特に赤・青)。
もちろん原液を使えばより鮮明ですが、多少薄めても遜色ないレベルで染まってくれる優れものです。
のちほど登場する青で染めた植物の写真は、ファンタジー(ロイヤルブルー)を2倍に希釈して使っています。
多少の希釈レベルじゃないって??(笑)。
フラワーアレンジメントやドライフラワーなどに用いられる物なので、ホームセンターやDIY・手芸系のショップで売っていますよ。
お次は、染色した植物を載せて観察するための板。
スマホで撮影するだけなら何に載せても良いのですが、透明な方が裏側からも見られるので良いと思います。
顕微鏡用のスライドガラスが最適ですが、無ければ100均などで売っている「プラバン用」のプラスチックシートがおすすめ。
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コンビニ弁当の透明のフタでも大丈夫。
ハサミやカッターで切れる厚さのものならOKです。
一般的なスライドガラスの大きさ(7.5×2.5cm)程度に切っておくと扱いやすいでしょう。
そのほか、染色液と植物を入れる❝花瓶❞となるビンが必要です。
我が家には趣味で買ったビーカーがあるのですが(笑)、ガラスの空き瓶が最適です!
どっしりとした厚手のガラス瓶の方が、背の高い植物を入れても安定しますよ(大容量のジャムとかピクルスとか)。
透明の瓶なら水位の変化も見られます。
さて、最後になりましたが、肝心の❝植物❞。
小学校ではホウセンカやジャガイモを使うことが多いですが、植物体として入手するのは難しいですよね。
実はどの植物でも良いのですが、観察のしやすさを考えると、茎が太めで薄くスライスしやすい(硬すぎない)ことが条件となります。
また、のちのち実験を発展させるとなると、条件も増えてくるので、後述するリストを参考に植物を選んでくださいね。
でも、基本の「吸い上げ実験」で茎の中の様子を中心にまとめるのであれば、イチオシの雑草があります。
それは❝セイタカアワダチソウ❞(画像参照)!
ほとんどの地域で見られ、名前の通り背が高いのでよく目立つ上に、無料です(笑)。
夏前には1メートルを超える草丈のものも珍しくありません。
秋にはてっぺんに黄色い花を咲かせますが、開花前だと気づきにくいかも。
でも、誰もが一度は見たことのある植物のはず!
新宿や丸の内などの都心でも、植え込みや道端にひょっこり生えてくる繁殖力旺盛な帰化植物です。
教科書的には「植物は根から水を吸収する」ことも学ぶので、根っこごと採取すれば申し分なし!
根に付いた土はバケツに汲んだ水の中で洗うときれいに落とせますよ。
生花店で買った花には根が付いていないので、この場合は「茎からも吸収できる」という点から話を始めましょう。
いずれの場合も吸い上げ前に少し切り落とすので、茎や根を長めに用意するのがおすすめです。
また、比較用として、ただの水を吸い上げさせた同種・同サイズの植物も用意しておくと結果が分かりやすく、自由研究的にも◎です。
実験の方法
さて、材料が揃ったら実験の準備をしましょう。
実験そのものは短時間で終了しますが、それには前準備が必要です。
やり忘れがないように前準備の段階から実験手順に組み込んで説明していきますが、実験自体は手順④以降です。
①実験に使う植物は30~2時間ほど水から出しておく。
水から出しておく時間は植物の種類や気温などによって変わるので、少ししおれたぐらいでOK。
あまり長時間水を与えないと、そのまま枯れてしまうので注意しましょう。
② ①の間に染色液を準備する。
食紅なら3gを1~1.5ℓの水に完全に溶かしておきます。
ファンタジーは原液のまま使用がメーカー推奨ですが、前述の通り多少希釈しても大丈夫(薄くなるけど実証済み)。
③プラバンを使う場合はカットしておく(待ち時間に切ってもOK)。
④植物を準備する。
根が付いているものは先端を3分の1ほど切って捨てる。
根がないものは、先端を数センチ切り落とす。
⑤ビーカーなどに②と植物を入れ、染色液(色水)を吸わせる。
画像はセイタカアワダチソウ。
上部の茎が柔らかい辺りを使用しています。(根なし)
⑥15分~半日ほど放置して、植物に吸い上げさせる。
吸い上げに要する時間は植物や着色剤によって異なります。
どの辺まで吸い上げたか、茎や葉の様子を見て判断しましょう。
画像は90分後のセイタカアワダチソウの葉ですが、吸い上げ前と比べれば一目瞭然!赤っぽく染まっていますね。
⑦植物を取り出し、カッターなどで薄く切る(=切片を作る)。
切るときは刃を長く出し、すっと1回で切るようにする(ノコギリのように刃を往復させると断面が汚くなる)。
横方向(輪切り)だけでなく、縦方向にも切ってみよう(手順⑧の画像参照)。
⑧スマホなどで撮影し記録する。
プラバンやスライドガラスにのせてみてみましょう。
背景の色を変えた方が見やすい場合もあります(今回は白)。
⑨撮影した画像を拡大し、保管する。
スクリーンショットを撮るなどして拡大画像で記録し、気付いたことをメモしておきましょう。
⑩ 顕微鏡を使う場合は切片をセロハンテープで固定する。
写真を撮って記録する(観察や写真の撮り方のコツは後述)。
基本の実験は以上で終了です。
植物着色剤を使えば手順④から⑩までやっても1時間以内で完了!
超時短の自由研究の実験です。
さて、顕微鏡で観察&撮影する際のポイントについて触れておきましょう。
まず、今回の切片のように厚みがある場合は、バックライトや反射鏡による❝透過光❞だと観察できないことが多いです。
このような時は透過光を使わずに、部屋の照明など上部から光を当てて観察するのがベスト。
もう一つ、顕微鏡の視野をスマホで撮影するときのテクニックを紹介しましょう。
用意するものはペットボトルのフタ。
これの真ん中に千枚通しで穴を開けます。
これを顕微鏡の接眼レンズに被せ、スマホのレンズを穴にあてて撮影するとピントが合いやすくなりますよ。
機種によってはもっと大きな穴でもOK。
このようにして撮影したのが、手順⑩の写真です。
「上部からの光」と「ペットボトルのフタ」、これで撮影は完璧です!!
顕微鏡まではいらないけれど、もうちょっと詳しく見てみたい…という方は、「スマホに装着するレンズ」を使用するのがおすすめです。
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顕微鏡には及びませんが、そのまま拡大写真が撮れるのが最大のメリット!
画面の大きなタブレットを使えば高倍率にできますし、撮った写真をズームしてスクリーンショットを撮ればかなり拡大できます。
※ 画像は多少粗くなりますが。
最近では100均でもスマホ用拡大レンズが市販されているので、試しに活用してみるのも良いでしょう。
さて、ここから先は応用編。
…と言っても小学校1年生から取り組める簡単なものから、高校生物にも踏み込めそうな実験まで、幅広くご提案しています。
基本の実験と併せて実験をプラスしたり調べ物をしたりすれば、自由研究の内容が濃く、考察に書ける量も増えて、読み応えのある研究レポートに仕上がりますよ。
少し付け加えるだけでブラッシュアップできるので、ぜひ挑戦してみてください!
うまくセッティングすれば同時に結果が得られるものもありますよ~!
応用編①:調べ学習をプラス
スマホの拡大画像だけでも(肉眼でも)植物の内部には色素に染まった部分と染まっていない部分があることがわかりますね。
前者の❝染まった部分❞が水の通り道というわけ。
この部分を「道管」と呼ぶことを中学生になると習います。
同時に、植物には栄養分を全身に運ぶ「師管」という組織があり、道管と師管を合わせて「維管束」と呼ぶことも習います。
この維管束を観察しやすいのが葉。
実は葉脈の正体は維管束なんです。
手順⑥で葉をよく観察すると、葉脈に沿って染まっていることがよくわかります。
維管束の一部である道管が色水を運んだからなんですね。
こういった気づきも発展学習の1つ。
そのほか「木部」や「形成層」などもキーワードです。
低学年なら植物の定義をまとめてみても良いでしょう。
すでに述べていますが、根・茎・葉以外の部分(花や種子)は定義に入らないのでしょうか。
調べてみると、植物にも様々な生存戦略があることがわかります。
花が咲き、種子を付ける以外にもいろんな子孫の残し方があるのは、植物の知恵の結晶です。
※ ヒント:球根、前葉体など
植物について調べながら考察に書けるネタを増やしていくと、深みのある、まとまった自由研究になりますよ。
応用編②:いろんな色で染めてみる
今回の実験で着色料は赤色をおすすめしましたが、青色で染めるとこんな感じ(画像参照)になります。
前述の『ファンタジー(ロイヤルブルー)』を2倍希釈して染めたセイタカアワダチソウの茎の切片です。
道管の分かりやすさは赤がベストですが、他の色でも同じように染まれば、色水が道管を通っていることの証明にもなりますね。
次項で紹介する実験と併せてやってみてください!
応用編③:花にも色水を吸わせてみる
今回Uniはセイタカアワダチソウの茎と葉だけを用いて実験をしましたが、花が咲いていたらどうなるでしょう?
道管は植物の隅々にまで大切な水を供給するパイプのような役割。
花まで届いているのなら、手順⑥の葉のように花も染まるはず…ですね。
多くの植物の内部は白っぽいので、大抵の植物で吸い上げ実験は可能ですが、花が染まっているかを確認するには白い花を選ぶのが一番です。
でも、答えを用意せず、子供に問いかけるようにしましょう。
きれいに吸い上げる花としては、カーネーションが水揚げが良いのでおすすめ。
スイートピーも季節を問わず入手しやすいのでおすすめです。
もし可能なら染色液を2色用意し、茎の下部を縦に切って、それぞれの色水につけてみましょう。
ストックのような太い茎ならカッターで十字に切り、2色を隣り合わないように並べて吸わせてみてください。
花のどこが何色に染まるかで、茎の中を道管がどのように通っているか、推測することができますね。
もし花の色が2色の混合色(赤と青を吸わせた場合は紫)になるのなら、道管は植物の中を縦横無尽に通っていると考えられます。
さて、どうなるでしょうか??
花の色と同時に、茎の断面の染まり具合も確認してくださいね!
さらに高学年や中学生なら道管が水を吸い上げる仕組みについて調べるのもおすすめ。
ちょっと難しいですが、「根圧」「凝集力」「蒸散(実験②参照)」そして「毛細管現象」などをキーワードにして調べてみましょう。
10mを超える高い木々のてっぺんまで水が運ばれる仕組みに、きっと驚きますよ♪
応用編④:吸い上げた水の量を測定する
植物が水を吸い上げるのは感覚的にも理解できることですが、ではどのくらい吸い上げているのでしょうか?
手順⑤で、植物を染色液に入れた直後の水面の位置にテープを貼り、瓶の口の隙間をラップで覆っておくと「水位の変化=植物の吸水量」となります。
「吸い上げ実験」を発展させた実験が組み合わせられますね。
見た目で判断できるので、低学年におすすめの方法です。
一方、中学年・高学年や中学生なら具体的な数値で吸い上げ量を測定してみましょう。
小学校6年生でも水の量の変化は目視で確認しますが、具体的な数量として捉えないことが多いようです。
数値で表すところまで踏み込めば、学校の授業を上回るレベルに持って行けますね。
方法は簡単!
手順⑤で植物を挿し、ラップで瓶の口を塞いだら、容器ごと重さを測定します。
一定時間ごとに調べていけば、吸水量の経時変化が調べられるわけです。
同じ植物でも、大きさ(草丈の長さ/重さ)や植物の種類の違いよって吸水の量や速さに差が生じるのか、調べてみるのもおすすめです。
手順①で水切りしていた時間の違い(しおれ具合)や、染色液の量(植物の草丈に対する染色液の深さ)の違いなどを調べても面白いですね。
植物の大きさと吸水量を比で表してみるのも良いでしょう。
時間の経過や吸水量などをグラフで表すと、かなり研究っぽくなって◎です♪
応用編⑤:単子葉類で吸い上げ実験をしてみる
陸上の植物は分類上「コケ植物」「シダ植物」「種子植物」に分けられ、種子植物はさらに「裸子植物」「被子植物」に分けられます。
コケとシダはイメージできると思うのですが、裸子/被子植物と言われると「?」となる人も多いのではないでしょうか。
裸子植物とはスギ、イチョウ、ソテツ、ヒノキ、マツの仲間のこと。
胚珠(種子になる部分)がむき出しになっている植物で、現代まで生き延びているのはこの5つの仲間だけです。
一方、コケ・シダ植物とこれら裸子植物を除いた陸上植物はすべて被子植物。
この分類は中学1年生の学習範囲です。
そしてこの被子植物がさら「単子葉類」と「双子葉類」に分けられるのですが…
名前の通り、発芽したとき、
・単子葉類:子葉が1枚出てくる
・双子葉類:子葉が2枚出てくる
という特徴があります。(画像参照)
実は両者には他にも違いがあります。
1つは葉脈の違い。
単子葉類の葉脈は平行して走る❝平行脈❞ですが、双子葉類は網目になった❝網状脈❞になっています。
そして❝道管❞を含む維管束の通り方の違い。
今回Uniが実験したセイタカアワダチソウは双子葉類です。
ぜひ単子葉類の植物でも吸い上げ実験をしてみてください(具体例は後述)。
道管(維管束)の通り方にどのような違いがあるのか、一目瞭然ですよ。
単子葉類と双子葉類には、ほかにも根の形状や二次成長などにも違いが見られます。
調べてみてくださいね。
中学生・高校生なら「3数性」という言葉もキーワードとして面白いと思います。
生物と数字の不思議に魅了されますよ、きっと(^-^)
こういった違いを実体験しながら、植物の分類で自由研究を仕上げるのも良いのではないでしょうか。
見た目の違いだけでなく、茎の内部や葉の構造など様々な違いがあることに気づかされることでしょう。
NHKの朝ドラで有名になった牧野富太郎博士に近づけるかも??
そして、進化の過程で起こった両者の違いが、結果的にどのようなメリットにつながっているのか、あれこれ考えてみるのもおもしろいですよ。
【実験②】❝水の出入口❞気孔の観察
植物に与えた水が、ずっと植物の体の中にとどまっているのだとしたら、常に水を必要とするはずがありませんね。
水を与えなければ枯れてしまうのは、水が植物の体から失われているからです。
では、根や茎から吸い上げられた水は、どこへ行ってしまうのでしょうか?
これも小学校(6年生)・中学校でよくある実験の1つ。
植物には❝気孔❞という水の出入口となる穴があることを学びます。
でも、アプローチの仕方が異なるので、自由研究でも好みのやり方で実験するのが良いと思います。
なお、植物ではありませんが、4年生では水が蒸発することを学んでおり、低学年でも洗濯物が乾くなどの現象を通して水の蒸発については理解できると思います。
ここでは植物の体のどこから水が出ていくのか、実験を通して確認してみましょう。
用意するもの
- 実験①でつかったもの
- ビニール袋(小さめの物)と紐、あればワセリン
実験①と同様にセットするのが基本です。
ただし、植物は茎・葉(または根)だけでなく、花付きの方が実験のバリエーションが増やせるのでおすすめです。
実験方法
実験①と同じように染色液(なければ水のみでもOK)に植物を入れます。
水の出入口だと思われる器官だけにビニール袋を被せ、空気を閉じ込めるようにして袋の口を紐で縛ります。
例えば花だけ、葉だけ、茎だけ…とビニールに入れてみるわけです。
このとき、瓶の口が袋の中に入らないように注意してくだしさいね。
切った植物でなく、鉢植えや地植えのまま実験してもOKです。
また、何も入れずに空気だけ入れて口を閉じたビニール袋も作り、植物の隣に置いておきましょう。
植物は直射日光が当たらない、明るく暑すぎない部屋が適しています。
(暑すぎると植物が弱り、寒すぎると活性が下がるので。)
そして、このまま数時間おいてから、ビニール袋の様子を観察してください。
ビニール袋に水滴が付いているものがありませんか?
水滴がつくのは袋の中の水蒸気が飽和(とてもたくさん存在)したからです。
その水蒸気こそ、植物の体から放出された水というわけ。
花瓶で実験していたなら、水位の変化にも注目してくださいね。
この実験を通して、水蒸気がたくさんついているビニール袋に入っていた部分が、植物の水の出口であると証明できます。
小学6年生なら夏休み頃にはこの現象が葉で起こっていることを習っていると思います。
そして、この水を放出する仕組みを「蒸散」ということも学んでいるはずです。
さて、上記のビニール袋を使った方法は小学校の教科書によく掲載されている方法。
中学校では小学校で学んだ蒸散を細胞レベルで捉えていきます。
すなわち、蒸散が行われるのは「気孔」という穴で、それを構成しているのが「孔辺細胞」。
気孔が分布している場所も実験によって確認していくわけです。
(この実験、よく定期テストに出されるんですよね~)
どんな実験かというと、葉の表にワセリンを塗ったものと、裏に塗ったものをそれぞれ用意し、別々にビニール袋を被せる、というもの。
蒸散が起きなかったら気孔がワセリンで塞がれていたことになるので、その部位(結論を言っちゃうと葉の裏側)に気孔が集中して分布していると言えるわけです。
また、実験①の吸い上げ実験のように色水を吸わせている場合、気孔の周辺が染まっているはずです。
このことから、根や茎から吸い上げられた水が道管を通って気孔まで供給されていることがわかります。
なお、気孔は顕微鏡があれば簡単に観察することができます。
夏休みなら道端にツユクサが生えていると思うので、これを使わない手はありません!
ツユクサは気孔の数が多いので、かなりの確率で気孔が見られる優れものなんです。
ツユクサの葉を一枚取り、ねじるようにしてゆっくりと千切ります。
すると薄膜がはがれるので、これをスライドガラスやプラバンに載せ、セロテープを被せて軽く押さえましょう。
顕微鏡でみると気孔を構成する孔辺細胞が見られるはず。
(画像参照)
難しければ葉の裏にセロテープをしっかり貼り付けて、そっと剥がす方法もあります。
上手くいけば孔辺細胞を含む表皮が採取できるので、セロテープごとスライドガラスに貼って観察しましょう。
孔辺細胞はタラコ唇のような形で、かわいいですよ。
色水を吸わせてから採取してもいいですね。
ツユクサの他、ホウセンカの葉でも同様に実験できますよ。
また、孔辺細胞を観察するだけなら、ぴったりの植物があります。
それが園芸用品種のシマムラサキツユクサ(別名:ゼブリナ、トラデスカンチア)というもの。
前述のように葉を千切らなくても、裏返してそのまま顕微鏡で観察できるので簡単です。
※ 色水の吸い上げの観察には向きません。
垂れ下がっていると分かりにくいですが、白い線のない側が葉の裏なので、間違えないように!
茎の先端側(縞が明瞭)の葉の方が観察しやすいですよ。
方法は、葉の裏を上にしてスライドガラスなどに固定し、顕微鏡などで観察するだけ。
画像は小さい新芽を使っていますが、大きな葉をカットしてもOKです。
シマムラサキツユクサの葉には紫色のアントシアニン系色素が存在しますが、孔辺細胞にはないので透明っぽく見えます(画像の囲み部など)。
逆に、孔辺細胞に挟まれた穴の部分(気孔)は赤っぽくみえますね。
ちなみにこの顕微鏡写真の倍率は対物10倍、接眼10倍です。
挿し木でどんどん増やせるので、実験後はハンギングなどのインテリアにも◎。
なお、針葉樹のマツの葉には、直線的に並んだ気孔が見られます。
これも千切らず、直接顕微鏡で観察できますよ。
スライドガラスなどに葉の裏側が上になるようにして貼り付ければOKです。
さらに、水を与えずしおれ気味の植物と、水が足りている植物では気孔の様子が変化します。
ぜひ両方観察してみてくださいね。
また、気孔は水の出入りだけでなく、空気の取り込みも行っています。
植物も酸素を吸って二酸化炭素を吐き出す❝呼吸❞をしますし、何よりも光合成に必要な二酸化炭素を大量に気孔から取り入れています。
中学校では「光合成には光・水・二酸化炭素が必要」であることを学びますが、このとき大切なのが気孔なんですね。
高校生物では6分子の二酸化炭素と12分子の水から1分子のブドウ糖(グルコース)と6分子の水、そして6分子の酸素が合成されることを学びます。
それならば、水の出入りだけでなく、気孔から空気も出入りしていることを確認できないでしょうか?
…これは実験しようとすると非常に大変なので、簡単な観察方法のみ紹介します。
それは、交通量の激しいところの植物の葉を採取して、気孔を観察する方法です。
こういった道路わきの植え込みに生えている植物の気孔には黒っぽい異物が見られます。
これは車の排気ガスなどの汚染された空気を吸い込んだために起こる現象。
幹線道路の街路樹や植え込みに生えているツユクサなどの葉がおすすめですよ!
当たり・ハズレがあるので、多めに採取して観察してくださいね。
なお、植物が呼吸や光合成による気体の吸収・放出を行っていることは実験で確認できます。
放出についてはコチラの記事で解説していますので、参考にしてください!
【実験③】植物を逆さにしたらどうなる?
突然ですが、多くの植物は上に向かって伸びていきますよね。
では、逆さまに置いたら、どうなるでしょうか?
そのまま下へ向かって伸びる?
それとも茎を曲げて、やはり上へ伸びようとする?
結論的には、ほとんどの植物が逆さにしても重力に逆らって上へ向かって伸びていきます。
Uniが実験に使ったのはカイワレダイコン。豆苗でも実験できます。
理論が高校生物レベルになるので、ちょっと難しいかもしれませんが、興味がある人は実験してみてください。
この現象には刺激を受けたときに一定の方向へ曲がっていく植物の性質❝屈性❞が大きく関わっています。
植物の成長には、主に茎の先端(頂芽)で生成される❝オーキシン❞という植物ホルモンの働きが大きいことがわかっています。
オーキシンは光と反対の方向に移動する性質があり、移動した場所に集まった結果、ある濃度になるとその部位の成長を促進します。
※成長に適切な❝ある濃度❞は茎・根など部位によって異なります。
例えば今回の実験の場合、窓側から光が差し込んだ結果、オーキシンは光が当たらない手前側(Uniが撮影している側)に集まり、手前側の茎の細胞が分裂・成長した結果、窓の方へ曲がったと考えられるわけです(光屈性)。
このほか、オーキシンには重力方向へ移動する性質も知られています。
この結果見られるのが、根が重力方向へと伸び、茎はその反対方向へ伸びる❝重力屈性❞です。
※ 根が延びる方向は重力のほか、水分量など他の要因も関係します。
オーキシン濃度は植物の部位ごとに最適な濃度が決まっており、最適なら成長しますが、高すぎると成長が阻害される場合もあります。
では、植物を逆さに吊るした場合で考えてみましょう。
頂芽で合成されたオーキシンは逆さ吊りになっているため、重力方向である頂芽から移動しないことになり、頂芽での成長は阻害されることになってしまいます。
しかし、本実験のカイワレも、多くの垂れ下がる植物たちも、新芽が成長し伸びていきますね。
これは逆さまであってもオーキシンが重力に逆らって移動し、頂芽の濃度を適正に保つ仕組みがあることを意味します。
ところで、今回のテーマは「植物の水の通り道」でしたね。
オーキシンは水ではありません。
もし水のように主として下から上へ運ばれていたら、オーキシンは頂芽周辺にしか分布できなくなってしまいます(水と一緒に移動もしますが)。
では、どのようにして移動するのでしょうか?
実はオーキシンは、植物の細胞から細胞へとバケツリレーのような方法で運ばれているのです。
このバケツ(輸送タンパク質)には、細胞の中へオーキシンを入れるバケツ(AUXタンパク質)と、細胞の外に汲みだすバケツ(PINタンパク質)の2種類があります。
そして、PINタンパク質には、1つの細胞でも植物の基部(根本)側の面に偏って分布するという性質があります。
このため、頂芽で合成されたオーキシンは植物の体勢に関わらず、茎の先端から基部に向かって移動していくと考えられています。
このオーキシンの移動を「極性移動」と呼んでいます。
なお、PINタンパク質は、❝フォトトロピン❞という光を感じるタンパク質によって光と反対側の細胞膜へ移動することも知られています。
吊るされたカイワレダイコンが、重力に逆らい、光の方へ伸びていくのには、ここで挙げた植物ホルモンの作用と移動の複雑なシステムが関係しているのですね。
※今回焦点を当てたのは、植物の成長システムのほんの一例です。
少々話が難しくなりましたが、植物には道管・師管といった維管束以外にも、細胞レベルの物質の輸送方法があるということです。
では、カイワレダイコンを水平にして暗い箱の中に入れておいたら、頂芽はどちらの方向に向かうでしょうか?
光がなければ光屈性はおきませんね。
極性移動によってオーキシンが移動し、そのまま水平方向に伸びるでしょうか。
それとも重力によるオーキシンの移動も影響し、立ち上がるでしょうか。
色々組み合わせて実験してみてくださいね!
【付録】各実験に適した植物リスト
最後に、今回取り上げた実験に適した植物を紹介します。
花屋で購入できる植物のほか、雑草や野菜でも実験できるので、ぜひやってみてください。
下記以外にも使える植物はたくさんあります。
特徴として、
【吸い上げ実験】
茎が太い方がスマホや肉眼でも観察しやすく、やわらかい方が切片を作りやすい。
硬い茎でも頭頂部は柔らかいことが多いので、上部を使うとうまくいくこともある。
セロリは太くて柔らかいうえに色が薄いので、最適(根はないが…)。
【花の染色】
染色だけなら白色の花ならわかりやすい。
茎を縦に分割して複数の色水を吸い上げる際には、太く柔らかい茎のもの(=吸い上げ実験で使うもの)がおすすめ。
【気孔の観察】
雑草のイヌタデ(別名:アカマンマ)もツユクサと同じ方法で実験できる。
セロテープで貼り付ける方法で、いろんな植物を試してみるのもおすすめ。
…の条件を兼ね備えているものが良いと思います。
本文内で紹介した植物も、もちろんおすすめです。
下表にない植物でも意外と面白い実験ができるかもしれません。
キャベツや白菜で吸い上げ実験したり、ホウレンソウや小松菜などの気孔を探してみたり、身近な野菜も立派な植物。
色々やってみてくださいね!!
植物名 | ①道管の染色 | ①花の染色 | ②気孔の観察 |
---|---|---|---|
ジャガイモ | 〇 | 〇 | △ |
ホウセンカ | ◎◎◎ | ◎ | ◎ |
ストック | ◎◎ | ◎ | × |
キンギョソウ | ◎◎ | ◎ | × |
カンパニュラ(ツリガネソウ) | ◎ | ◎ | × |
カラー | △ | 〇 | × |
カーネーション、カスミソウ、バラ | △ | ◎ | × |
トルコギキョウ | △ | ◎ | △ |
ユリ(単子葉類) | 〇 | 〇 | 〇 |
ランの仲間(単子葉類) | × | × | 〇 |
アヤメ、ショウブの仲間(単子葉類) | 〇 | 〇 | △ |
セイタカアワダチソウ(雑草) | ◎ | × | △ |
ヒメジョオン(雑草) | △ | 〇 | △ |
ススキ(雑草/単子葉類) | × | × | △ |
ツユクサ(雑草/単子葉類) | × | × | ◎◎◎ |
トウモロコシ(単子葉類) | 〇 | × | △ |
セロリ | ◎◎◎ | × | △ |
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