首都圏からアクセスしやすい日光には、歴史的文化遺産や美しい街並み、おいしい食べ物もいっぱい!
でも、今回ご紹介したいのは、日光の豊かな自然です。
紅葉で有名な「いろは坂」に、風光明媚な「中禅寺湖」、ラムサール条約に登録された「戦場ヶ原」など、日光ならではの自然が育んだおすすめスポットがたくさんあるのです。
そして、そこは学校で習っただけでは身に付かない大自然の営みを、実体験できる絶好のスポット!
子供の「あ、みつけた!」の声に「どこ?どこ?」と顔を寄せ合う…そんな発見の旅育へ出かけてみませんか?
いろは坂
日光市街地と中禅寺湖を結ぶ「いろは坂」。
カーブの数が「48」であることから、いろは歌の48音と重ねて名付けられました。
(初めから48だったわけではなく、カーブを減らして48に合わせたそうですw)
ちなみに、いろは歌は小学校の国語の教科書でも紹介されており(当サイト管理人Uniの子供は暗唱テストがありました)…
【 いろは歌 】
いろはにほへと ちりぬるを (色は匂へど 散りぬるを)
わかよたれそ つねならむ (我が世誰ぞ 常ならむ)
うゐのおくやま けふこえて (有為の奥山 今日越えて)
あさきゆめみし ゑひもせす (浅き夢見じ 酔ひもせず)
の47文字から成ります。
これに無い「ん」を足し、第二いろは坂(上り)の20カーブに「い」~「ね」、第一いろは坂(下り)の28カーブに「な」~「ん」の48文字が配されています。
紅葉の名所で仕組みを学ぶ
いろは坂は関東有数の紅葉の名所で、生物学的には落葉樹に分類されるカエデの仲間(モミジもこの仲間)やナナカマドなどが山頂近くから色づき、山の麓へと降りてきます。
大人から見れば当たり前の紅葉ですが、「なぜ」と聞かれたら説明できますか?
ここで紅葉の仕組みについて、知っておきましょう。
多くの植物は緑色をしていますね。
これは特に葉の部分に光合成を行う葉緑体という小器官があり、そこに含まれる「クロロフィル」という色素が緑色をしているためです。
このクロロフィルが反射させる光の色が緑(波長550ナノメートル)なので、私たちの目には葉が緑色に見えるのです。
ところで、光合成とは植物が二酸化炭素と水を吸収し、光によって酸素と栄養素(ブドウ糖)を作り出す仕組み。
植物は葉で作られたブドウ糖を枝から幹へと運び、植物全体に行き渡らせています。
この辺りは小学校6年生の理科でさわりだけ、中学校でさらに詳しく学びます。
この光合成が最も効率よく行えるのは、気温25℃のとき。
葉をたくさん茂らせて光を受けようと頑張っても、秋になれば光量も気温も下がり、光合成によって得られるブドウ糖の合成量は減っていきます。
一方、植物全体で見てみれば、葉を維持するのにも膨大なエネルギーを消費するし、乾燥する冬場にも葉の裏側にある「気孔」からの蒸散作用によって水分を失ってしまいます。
つまり、秋が深まる頃には、葉があるメリットよりもデメリットの方が勝ってしまうのです。
そこで「気温が下がったら、葉を捨てちゃおう」という究極の生き残り戦略を選択した植物が「落葉樹」です。
まず、分解と再合成で一定量を維持していたクロロフィルの合成をストップします。
葉には元々、黄色い波長の光を跳ね返す「カロテノイド」という色素が含まれているのですが、クロロフィルが減少することにより、葉が黄色く見えるようになります。
イチョウの葉が黄色く色づくのは、このためなんですね。
紅くなる葉の場合は、葉の付け根部分に離層が形成され、これによって葉で作られたブドウ糖が幹の方へ移動できなくなり、葉にとどまるようになります。
葉に残されたブドウ糖に光が当たり続けると、同じく残っていた酵素の作用と合わさって「アントシアン」に変化します。
このアントシアンが赤や紫色の色素なので、葉が赤く見えるというわけです。
そのため、クロロフィルとアントシアンが混在しているときは茶色っぽく見えるんですね。
やがて離層の部分がはずれ、葉は根本に落ちます。
落ちた葉は昆虫や微生物によって分解され、木の栄養分となって今度は根から吸収されます。
自然の摂理って本当に合理的ですよね。
さて、美しい紅葉を見るには、このような植物体の生化学的な反応をはじめ、次のような条件が揃うことが必要です。
日光のいろは坂はこの条件を満たす絶好のスポット。
その年の気候にもよりますが、標高800mから1,200mほどの「いろは坂」では気温が急激に下がりやすく、平地よりも早く色づき、標高差があるので時間差で紅葉が始まります。
また、山の斜面であるため遮るものがなく、日光がよく当たり、中禅寺湖や多くの川・沢などによって湿度も保たれています。
こういった好条件の場所に紅葉する落葉樹がたくさん生えているため、いろは坂では辺り一面が赤や黄色に染まる群生美を、比較的長い期間楽しめるのです。
紅葉の美しさの裏側に、植物の厳しくも潔い生き残り戦略があることを、子供に伝えてあげたいですね。
渋滞はあるけれどメリットも
いろは坂は美しい新緑や紅葉に包まれる絶好のスポットですが、唯一残念なのが渋滞。
空いていれば上り20~30分のところ、観光シーズンには2~3時間という混雑に。
ただし、管理人Uniがゴールデンウィーク中日の午後2時過ぎに上り始めたところ、車列は連なっていたものの、スピードを落とすことなく上り切ることができました。
子供たちはお約束のカーブを「い」「ろ」「は」…と数えて盛り上がり、時折姿を見せる野生のニホンザル探しにも夢中でした。
また、第二いろは坂(上り)の終点付近にある「明智平」で車を停め、リフレッシュするのもいいでしょう。
ここにはロープウェイがあり、たった3分で明智平展望台まで行けます(大人往復730円)。
展望台はもちろん、ロープウェイからみる景色も格別!日光を一望できます。
子供ならちょっとしたスリルも味わえますよ。
渋滞は疲れる面もありますが、ニホンザルや周りの木々をゆっくり見られるというメリットもあります。
また、連続するヘアピンカーブで車酔いに悩む人も、ゆっくり進めば酔いにくいですね。
(管理人Uniも酔うので、辛さはよくわかります…。念のため、酔い止めも持っていくのがおすすめ。)
なお、サルへの餌付けは日光市の条例により禁止されていますので、どんなにかわいくても我慢してくださいね。
安全のため、窓も閉めておきましょう。
いろは坂は紅葉の季節もいいですが、新緑の美しい春~初夏もおすすめ。
ヤマツツジの鮮やかな花や初夏にかけての高山植物など、渋滞していても車窓が楽しめます。
どのシーズンでも豊かな自然が出迎えてくれる、管理人Uniのおすすめスポットです。
中禅寺湖
海抜1269mという高地にある珍しい「中禅寺湖」。
ダムなどの人工的な湖を除けば日本一の高さにあるので、❝天空の湖❞とも呼ばれています。
最も深いところで水深163m、周囲は25kmありますから、この高さにある湖としては大きいですよね。
地球の歴史を学ぼう
中禅寺湖ができたのは、約2万年前。
男体山(なんたいさん)の噴火による溶岩によって大谷川の渓谷が堰き止められ、生まれました。
これを地形学的には火山性堰止湖(かざんせいせきとめこ)といいます。
有名な堰止湖に「富士五湖」がありますが、その中で一番大きく高いところにある山中湖でも面積6.8㎢、標高は約981m。
天空の湖と称されるだけでなく大きさを見ても、中禅寺湖は特別な存在であるといえるでしょう。
ちなみに、男体山は2017年に活火山に認定されています。
…といっても、一番新しい噴火でも7000万年前とのことですから、古文書などによる記録もありません。
活火山の定義が「概ね過去1万年以内に噴火した火山及び現在活発な噴気活動のある火山」であるため、男体山も活火山ということになるわけです。
でも、火山のイメージありませんよね?
しかし、この中禅寺湖や後述する戦場ヶ原など、日光の風光明媚な自然を作り出したのは男体山の火山活動によるところが大きく、日光を語るときには外せない存在といえるでしょう。
日光の自然や成り立ちは、
日光自然博物館 公式ウェブサイト
にて学ぶことができます。
生態系への影響を考える:外来種と放射性物質
もともと魚は生息していなかった中禅寺湖ですが、1906年にヒメマスの放流が行われ、現在ではワカサギ、ウグイ、コイ、フナなどの在来種(一部は帰化)に加え、コクチバス(ブラックバスの仲間)に代表される外来種も確認されています。
日本固有の生態系を脅かす外来種の存在と、それが身勝手な飼育放棄などに起因することを子供に教えてあげたいですね。
また、中禅寺湖では3.11の東日本大震災による福島第一原子力発電所の放射性物質拡散の影響を受け、現在でも生きたままの持ち出しが制限され、釣りはキャッチ&リリースが基本。
中禅寺湖の一部の魚類に見られる放射線量の高さは、これらの魚類が湖の食物連鎖の頂点にいるため、生物濃縮が起こっているからです。
この生物濃縮について、少し詳しく見てみましょう。
生物がエサを食べると消化・排泄が行われますが、このとき体内にとどまる物もあり、そこに有害なものが含まれることがあります。
例えば、ミジンコのような小さい水生生物が、放射性セシウムを含むエサを食べたとします。
セシウムは体外に排出されにくいため、ミジンコの体内には多くのセシウムが蓄積していき、周囲の水よりも高い濃度で存在するようになります。
そして、これらのミジンコを小魚が食べると、大量に食べたミジンコの体内にあったセシウムが小魚の体内に残ることになります。
さらに、この小魚を日に何匹も捕食するような大型の魚には更に多くのセシウムが貯まっていきます。
このように、食物連鎖の上位に位置する生物ほど体内に高濃度でセシウムが蓄積することになるのです。
ヒメマスとワカサギは持ち出しOK(生きたままは不可)ですが、この2種は動物プランクトンを主食としているので生物濃縮が起こりにくいため、セシウムの蓄積量が少ないことが確認されています。
その反面、魚食性の魚類の方が体内のセシウム量が多くなります。
放射性物質の影響は人類だけでなく、多くの生物にも多大な影響と苦しみを与えていること、科学を正しく理解し用いることの重要性についても、子供に伝える良い機会になると思います。
もちろん、中禅寺湖に観光に行くこと自体、何の問題もありません!
未だ風評被害に悩む近県の人々の実情も伝え、過剰に恐れる必要がないことも教えてあげましょう。
中禅寺湖で遊ぶ
さて、奥日光の入り口ともいえる中禅寺湖は夏場でも涼しいため、明治中期から避暑地として人気がありました。
イギリスやイタリアの大使館、長崎の観光スポット「グラバー園」で有名なトーマス・グラバーなどにも魅入られた、国際色豊かな別荘地帯だったのです。
現在では「英国大使館別荘記念公園」や「イタリア大使館別荘記念公園」として復元された建物の内部が公開され、当時の様子を垣間見ることができます。
別荘から眺める中禅寺湖の姿は格別!
大使たちが過ごした避暑地での優雅な時間を共有するのも良いでしょう。
また、湖面へと繰り出してみるのもおすすめ!
湖には貸しボート、遊覧船があり、幅広い世代が楽しめるようになっています。
いろは坂の渋滞でくたびれた子供たちには、ぜひここでリフレッシュさせてあげましょう。
湖面に映える男体山や木々を見るだけでもスッキリしますよ。
ちなみに遊覧船(公式ウェブサイトはこちら)は距離により大人300円から。
一周フリー乗車券は1,400円です。
湖の西岸「千手が浜」にクリンソウが咲き乱れる6月ごろには季節便も運航され、船上からピンクや紫に咲き乱れる可憐な花を見ることもできます。
さらにアクティブな人にはハイキングもおすすめ!
湖岸を歩きながら自然に触れるのもいいですが、「千手が浜」と近くの「西ノ湖」を結ぶルート「千手の森遊歩道」は比較的平坦なので頑張って歩いてみるのも良いかも!(参考マップ)
なお、中禅寺湖を一望したい人におすすめなのが「半月山展望台」です。
中禅寺湖スカイラインを登りきったところにある第二駐車場から徒歩20分のところにあります。
長時間のハイキングが難しかったり体力に自信がなかったりする子供でも、ここなら近くまで車で行けるので、ぜひ立ち寄ってみてください!
華厳の滝
日光の観光スポットとしてあまりにも有名な「華厳の滝(けごんのたき)」。
那智の滝・袋田の滝とともに「日本三大名瀑」となっています。
中禅寺湖から溢れ出した水が大尻川となり、落差97mの華厳の滝となって流れ落ちているんですね。
華厳の滝は春・夏・秋・冬とどの季節に見てもその美しさに息を飲みます。
滝の周囲を彩る木々が、季節によって趣を変えるからです。
管理人Uniは初夏の華厳の滝がお気に入り。
荒々しくも美しい一筋の流れに新緑が清々しさを増して、実に気分爽快です。
付近に民間の駐車場も多く、公共の駐車場310円よりも安く停められますが、若干混雑気味。
公共の方がスムーズに入れます。
ちなみに、中禅寺湖から流れ出した大尻川は、華厳の滝となって流れ落ちた後、大谷川と名前を変え、日光東照宮近くの「神橋」がかかる川となります。
華厳の滝以降は非常に削れやすい地質のため華厳渓谷となっており、豊かな自然を残しています。
地質学的な価値:柱状節理
さて、華厳の滝に行くとほとんどの人が滝壺へと落ちていく水を眺めますが(当たり前?)、管理人Uniが注目していただきたいのは滝の両側。
むき出しの岩盤をよく見ると、縦に何本もの筋が入っているのがわかります。
これが「柱状摂理(ちゅうじょうせつり)」。
1㎞にもわたる東尋坊の柱状節理は世界的に見ても珍しく有名ですが、なんと日光の華厳の滝にもあり、天然記念物になっているんですね。
この「節理」はマグマなどが冷えて固まる過程で冷却面から垂直に発達するのが特徴。
冷えたときに体積が減少して筋ができるため、独特の形状になります。
特に六角形や五角形などの柱状に発達したものを「柱状節理」と呼び、火山岩の一種・玄武岩で多くみられます。
この辺りは中学校の理科で学びますね。
華厳の滝の柱状節理は前述の男体山の火山活動によって形成されたとされ、ここでも太古の地球の息吹を感じることができるわけです。
大迫力の滝を下から体感
さて、華厳の滝には展望台が二か所あり、1つは上部から滝を見下ろすように見る無料の展望台。
もう1つはエレベーターで滝壺近くまで降りたところにある観瀑台です。
観瀑台は2階建てになっており、エレベーターの往復料金として570円(中学生以上)かかりますが、滝壺近くで見る大迫力の滝は一見の価値ありです。
車いす・ベビーカーの利用もでき、バリアフリーに滝のすぐ近くまで行けるので、ぜひ行ってみましょう!
無料の展望台からは滝壺が見えないのですが、観瀑台なら滝の正面と滝壺の両方が見られます。
水しぶきがかかるほどのダイナミックな滝を体感できますよ。
ちなみに華厳の滝の水量は1分あたり平均3トン。
現在は洪水対策や下流での水力発電利用のため、水量がコントロールされています。
それでも、雨が降ったあとや雪解けの春は比較的水量が多くなります。
大迫力の華厳の滝を見たい人は、狙ってみてくださいね!
また、エレベーター乗り場の近くには土産物や軽食を扱う店舗があり、トイレも併設されています。
少し休んでいくのにもいいところですよ。
1つ注意点として、滝周辺はかなり気温が下がります。
夏でも涼しく、Uniの子供は寒くなってしまって、私の上着を着せたほどでした。
車から降りるときは大丈夫でも、羽織ものを1枚持っていくのがおすすめです。
戦場ヶ原
日光国立公園内でも独特な美しさが見られる場所と言えば、「戦場ヶ原」でしょう。
名前の由来は、中禅寺湖を自分の領地とすべく、下野国の二荒神(二荒山=男体山)と上野国の赤城神(赤城山)が戦った地だから…とのこと。
このとき、二荒神は大へび、赤城神は大ムカデに化けて戦ったという伝説が『戦場ヶ原神戦譚』に記されています。
神話は神話…とくくることは簡単ですが、領地を巡る戦いは今も昔も同じ。
もしかしたら、この地を巡る土地の人々の火種が神話と重なっていったのかもしれません。
ちなみに、戦いに勝って中禅寺湖を手にしたのは二荒神(男体山)。
中禅寺湖が生まれるきっかけとなった山ですから、神話と事実がうまく調和しているところにロマンを感じます。
戦場ヶ原の成り立ち
戦場ヶ原は標高約1,400mにある湿原です。
その面積は400ha(ヘクタール)にも及びます…が、ヘクタールって言われてもピンとこないのが大人。
その点、子供は「4年生のとき学校で習った」といい、1ha=100a=10,000㎡ だと教えてくれました(苦笑)。
そうは言っても実感がわかないので調べたところ、東京ディズニーランドが46.5haなので、戦場ヶ原は東京ディズニーランド8.6個分の広さ!
もともとは中禅寺湖と同じく男体山の噴火によって生じた堰止湖だったのですが、その後、雨水や川などによって土砂が積もっていき、戦場ヶ原の原型ができあがりました。
やがて、その堆積物の上にヨシなどの水生植物が育ち始めます。
水生植物は分類学的にはシダ植物または種子植物で、進化によって陸(乾燥)への適応を果たした植物のうち、再び根や全体が水中で生存できるように戻っていったものです。
哺乳類でいうとクジラやイルカが相当しますね。
水生植物がなぜ水中へ戻ったのかが最大の疑問ですが、これは彼らなりの生き残り戦略です。
植物にとって欠かせない水の恵みと、温度など環境の変化が少ないことが、水中生活の利点と考えられています。
特に水生植物の中でも根だけが水中にある「抽水植物(ちゅうすいしょくぶつ)」は、水面上で日光と空気の恩恵を葉に受けつつ、水にも困らないという究極の生息地を手に入れたと言えるでしょう。
湿原には、ミズゴケなどの水生植物がどんどん堆積してできた「高層湿原」と、水がたまり栄養分も多い「低層湿原」、それらの中間的な「中間湿原」といった分類がありますが、戦場ヶ原にはすべての段階の湿原があるというのも貴重なポイント。
植物がそのまま堆積していくのは、気温が低く微生物を含めた分解者が繁殖しにくいため、植物が腐らないからです。
こういった泥状にならない湿原は、高地の特徴でもあります。
戦場ヶ原も春は新緑に包まれ、「ヌマガヤ」「オオアゼスゲ」「ワタスゲ」などが芽吹き、100種以上の湿原性植物を見ることができます。
霧に包まれたときは幻想的な光景を見ることができますよ。
5月下旬ごろには「トウゴクミツバツツジ」「アズマシャクナゲ」の花が見頃を迎え、徐々に「ズミ」「ワタスゲ」「ミヤマザクラ」「ノアザミ」などの可憐な植物を見ることができます。
一方、秋の戦場ヶ原は、趣の異なる美しさに包まれます。
9月下旬から10月上旬くらいまで、「草紅葉(くさもみじ)」とも呼ばれる草本類の葉が色づくさまが見られます。
どの季節もそれぞれに美しい戦場ヶ原。
日光の山々に囲まれた中に忽然と姿を現す湿原の美しさは、他とは一線を画す風景です。
湿原とラムサール条約
さて、戦場ヶ原の国道の西側にあたる44%ほどの湿地が、周辺の湯ノ湖、湯川、小田代原の一部とともに「奥日光の湿原」としてラムサール条約に登録されていることをご存知ですか?
ラムサール条約の正式名称は「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約」といいます。
前項でお伝えした奥日光の類まれな立地条件が豊かな生態系を育み、多くの野鳥の生息地として国際的に評価されたということになります。
戦場ヶ原で確認されている鳥類は、「オオジシギ」「ノビタキ」といった主に湿地帯に生息する鳥。
「オオジシギ」はシギ科タシギ属に分類され、日本では5種が確認されていますが、唯一国内で繁殖が確認されているのがこの「オオジシギ」です。
ハトよりも少し小さく、足もクチバシも長いのが特徴。
茶色い羽毛が保護色になっているので、ちょっと見つけにくいかもしれませんが、準絶滅危惧種に指定されている貴重な鳥です。
そして、かわいらしい仕草が見られる「ノビタキ」も必見!
美しい声でさえずるので、「近くにいるのかな?」と目を凝らすと、胸にオレンジ色の映えるオスを見つけることができます。
メスは少し地味な毛色をしていますが、やはり胸には淡いオレンジ色が見られます。
画像のように草や枝の先端にとまることが多いので、見つけやすい鳥です。
また、季節によって毛色が変わり、冬毛は濃い色に変わります。
ぜひ探してみてくださいね。
なお、ラムサール条約の目的は、生息・生育する動植物の「保全」と「賢明な利用」を進めることとしています。
環境保全だけでなく、自然資源を人間と共有し活用していくことも考えるというわけです。
人類と自然、この2者が共存していくことの大切さに思いを馳せる機会になるといいですね。
戦場ヶ原でハイキング
世界的に見ても貴重な自然が残る戦場ヶ原を思いっきり楽しみたいなら、ハイキングがおすすめ!
車を停めるなら「赤沼県営駐車場」がトイレなども併設されていて便利です。
戦場ヶ原に沿って歩ける「自然研究路」を通り湿原に架かる木道を歩くのは、子供でなくてもテンション⤴
環境省のマップを参考に、ルートを組んでみてくださいね。
少し頑張って足を延ばし、「湯滝」や「湯ノ湖」まで散策すると景色が変わって楽しいですよ。
約5㎞、3時間くらいのコースですが、ゴール近くにはトイレとバス停「湯滝入口」があるので、駐車場近くのバス停「赤沼」へバスで戻ることもできます。
戦場ヶ原周辺にはたくさんのハイキングルートがあり、平坦な道が多いので子供でも歩きやすいです。
マイナスイオンをたっぷり浴びつつ、野鳥の声に耳を澄ませてみてください。
なお、ハイキングコース周辺の通行などに関しては、
日光国立公園 日光湯本ビジターセンター(公式ウェブサイト)
にて最新情報を確認してから出発しましょう。
おわりに
東京から2時間半ほどで行ける日光は、とっても手軽な旅行先。
昭和レトロな雰囲気が漂う日光市街や、世界遺産に登録されている日光東照宮などもいいですが、たまには自然の中に身を置いて、彼らの声に耳を傾けてみませんか?
そこには普段なら見過ごしてしまう彼らのつつましくも逞しい姿があります。
そんな自然の営みを身近に感じられることこそが、旅育につながります。
子供と一緒に「新しい発見」の旅へ出かけてみませんか?
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